セックス中の紙の取り扱い方
性典物好きなので「あっちに性典物あるぞ~」と聞けば頑張って収集しに行くのだが、恋川笑山が描いた『實娯教絵抄(じつごきょうえしょう)』には、吉野紙の一種である「みす紙」のたたみ方が掲載されている。
みす紙たたみ方
二つに折り、また二つにたたみ片手かまたは口にて二、三枚ずつとりて拭くべし
口で紙を数枚ほど、そっと束から引き抜くのが艶やかな所作だったようだ。確かに指に唾つけて紙を数枚びゃっと取ったり、ガサガサ音立てるのは品は良くない(わたしはすると思うけど)。
事後に股に紙を詰める
当時の女性、特に遊女が紙を膣に詰める機会は様々あったようだ。
避妊のためにあらかじめ膣に紙を詰めたり、客の相手をする際に生理の経血が出ないように紙を詰めたりしていた。また、股から出る体液で布団や着物を汚さないために股に紙を挟むこともあった。
上の『實娯教絵抄』には詰め紙のたたみ方が掲載されており、紙をよく揉んでから四角くたたんで丸めてから唾で紙を湿らし股に詰める、と書かれている。
新婚初夜と犬張子
みなさんは「犬張子(いぬはりこ)」をご存知だろうか。
ネットで検索すると「ああ、これか」と見たことがある方もいるだろう。
子犬の形をした張子人形の「犬張子」は初宮参りで使用し、我が子の健やかな成長の願いが込められている。しかし江戸期の犬張子はこどもの成長ではなく、新婚初夜で出る紙入れとして用いられ、空洞になっている内部に交わりで使用した紙を捨てるのだ。
見た目も現代とは異なり目と鼻が小さく、少しきつい顔つきをしている。
天明八年(1788年)頃刊行された『婚礼秘事袋(こんれいひじぶくろ)』の嫁入り道具として犬張子が紹介されている。
夫と夜をともにするときは、妻の側に紙や犬張子を置く。使用した紙を犬張子に捨てるときは「犬張子」の頭部の蓋を取り、掃除をする者は尻尾部分の蓋を開けることが所作のようだ。
紙と性文化の関係を調べていると、紙を用いて始末を行うのは女性の務めであることが見えてきた。
男性の性器を女性が紙で拭く場面の春画もあり、紙を通して当時の性の価値観すらも見えてくる興味深い結果となった。
〈参考文献〉
・「百万塔」 第百六十三号 紙の博物館
・「珍具考」 中野栄三
Text/春画―ル
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