そんな、愛の与えどころに困ったカナエが選択したのはテレクラ。そこで母乳専門ダイヤルを発見し、そこで母乳マニアのヒロシと出会うのです。

「最高に張ってるよ」
 もう何人ものママのおっぱいを吸っているという彼は、手のひらで乳房をくるみ、ミルクを吸いだすしぐさも慣れている。勢いよく栓を捻られた乳首は、どッ、と白い液を唇の中へと流し込んだ。
(中略)
「あ、あぁん、あッ……あ」
 自然と声が漏れてくる。初対面の男の前なのに、私はナチュラルでいられた。妊娠前までは、異性と寝る時、自分を良く見せようと高めの声を出したり、ワザと感じているフリをしたりもしてきた。だが、そんなことをする気は、今は全然なかった。自分が取り繕ってきたのは、男にたくさん愛してもらいたかったからなのだ。愛してあげたい今は、ただ素のままでいたかった。ここまで変わっていた自分に私自身驚いたが、こちらのほうが、気持ちはひどく、ラクだった。(『やわらかバスト』P.191 L9~P192 L4)

『愛すること』を覚えると、素の自分を曝け出すことさえもできるようになる。愛を乞うために取り繕うことをやめた先には、自己の開放があるのです。
2013年、『愛されたい』から『愛したい』へ欲望をスライドさせてみてはいかがでしょうか

大泉りか 官能小説 やわらかバスト 内藤みか

書名:『やわらかバスト
著者:内藤みか
発行:祥伝社文庫
価格:¥630(+税)

 マニアックに思える『母乳プレイ』ですが、女性の心理描写がしっかりしているため、ぐいぐいと引きこまれてしまいます。

次回は、「『ツンデレ』の進化形態、『ツンマゾ!』に迫る(前半)」をお届けします。

Text/大泉りか