現実のバッドエンドに疲れている人にこそ読んでほしい!

 かつて自分が通っていた予備校の教師であり、恋焦がれて玉砕した篠原柊哉と再会を果たした少女コミック作家の由南は、父の跡を継いで、今は某大企業の社長になった柊哉をモデルに漫画を書くことになってしまう。

 仕方なく受けることになるが、しかし、男性経験の乏しさからのラブシーンを上手く書くことができていないことを、柊哉から指摘され『両思いになった後の大人の恋愛』を経験するために、二週間の期間限定で、恋人同士として柊哉と付き合うことに。

「いいじゃないか。もう恋人になったんだ」
――どうしたんだろう……。
 由南はそう思いながらも、彼のキスに、次第に思考が散漫になるのを感じた。
 雨が降るまで、確かに篠原は迷っていたし、何か由南に話したそうな風にも見えた。なのに今は、有無を言わさぬ強引さで逃げ場を塞ぎながら、由南を自分のものにしようとしている。
「あ……いや」
 耳朶を舌でなぞられ、由南はぴくんと肩を震わせた。
「どこでも感じるんだな、お前」
彼の声に欲情の兆しを感じ、由南は少し怖くなる。もう――止められないし、戻れない。
 熱っぽい唇が、耳から顎を愛撫するように食み、喉を舌で舐め上げる。
「あ……っ……あ……」
 由南は自分の指を噛み、小さくのけぞった。
 そんな由南の両腕を掴み、頭の上で拘束してから、篠原は例の危険なキスを始める。たちまち、由南の頭は白く濁って、胸が熱く脈打ち始める。
舌を引き出され、彼の舌先で愛撫される。閉じた脚の中に篠原の膝が入り込む。そうしながら彼は由南の腰に両手を回し、脇腹を優しく撫で上げた。そして、そっと両胸の膨らみを持ち上げる。
「……や……あ……」
 衣服ごしではあったが、初めての胸へと愛撫の予感がして、由南はそれだけで、壊れてしまいそうなほど心臓が激しく動き出すのを感じた。
 篠原は服の上から柔らかい膨らみを包み込み、大きな掌を使って、ゆっくりと揉み始めた。由南の息が浅くなるのを見計らうように、親指で、円を描くようにして敏感になった先端を撫でる。
(『乙女のままじゃいられない!』P217L9-P218L11)

 最初は反発しつつも、やがて再燃していく由南の恋心。
同じようにして柊哉の気持ちも由南に近づいてきたように思えたのですが、しかし二人をこの先、待ち受けているのは少女漫画お決まりの『数々の波瀾万丈』……しかし(あえていいますが)勿論ラストはハッピーエンド。

 しかも、この短い引用の中でもわかる通り、『両手頭上拘束』『膝ドン』といったオンナのトキメキのツボもふんだんに散りばめられていて、ハートがキュンキュンすること間違いなし。
何度も襲ってくる現実のバッドエンドに疲れ、絶望している女性にこそオススメしたい癒やしのための一冊です。

Text/大泉りか