当時使用されていた生理用品をつかってみた
当時ナプキンは無かったので、初潮を迎えると乳母や母親から紙と紙縒(こより)を用いた経血のお手当の作り方を教わる。
娘たちは初潮が来るまで「生理」について事前に習うことはなかったようで、ある日自分の股から流れてくる血に驚き、動揺したり泣いたりすることもあったようだ。
当方が持っている《実娯教絵抄》には経血の処置に使う当て物の説明が載っている。当時は「お馬」とも呼ばれていた。
「お馬の折り方」
半紙を縦に八ツにたたみ 中をつなぎ その上にまた一・二枚巻き付け
紙縒にて両方のすみを結留め、紐を通すなり
この絵をたよりにつくってみた自作がこちら。
当時、経血の処置に使用されていたのは“浅草紙”などの安価な再生紙であるが、衛生面を考えて今回は新品の和紙を使用した。
厚みのある和紙を使用したので、縦に八つ折りにしてさらに和紙を巻き付けると丈夫な当て物ができた。作って感じたことは、ひとつ作製するにも時間と手間がかかるということだ。生理期間中何回も交換するとなると多くの紙が必要だし、全部で何個作らないといけないのだろうか。
使用感もレポートしたかったので経血量が多い時に装着して、つけ心地やどれくらいの時間漏れずに使用できるか試した。紐パンツのように腰の位置で紐を結んで装着したのだが、ぷかぷかカパかパする。安易に外出をすれば内ももに経血がつくこと必須だろう。当時はショーツを履くことはなかったので、フンドシを着用する女性もいたようだ。
気になるつけ心地だが、意外なことに温かく感じた。和紙は保温性や通気性があるため現代でも和紙素材の衣類は重宝されている。ちなみに当時の浅草紙など髪の毛などの不純物が混ざった再生紙で作った当て物であれば、このようなつけ心地は得られないと思う。
当て物は横漏れ防止機能がないので経血が両側から染み出してきそうな頃に装着を終了したのだが、計一時間半ほど使用できた。
装着してから感じたのは、周りの巻き付け部分が汚れたらこの部分だけ紙を交換したら良いので、その都度一から作ることはなかったのではと仮説できた。
紙を膣に詰める方法もある
遊女などの春をひさいでいた女性たちにとって、数日間も当て物を装着して漏れないようにお部屋で静かに過ごす、なんてことはできない。よほどの経血量の日でなければ紙を膣に詰めてお客の相手をする。膣に紙を詰めることで紙が経血を吸い、しかも避妊の方法としても知られていたので、詰め紙はその両方の理由で用いられた。
和紙や紐でつくる当て物を使用していた女性たちは「当て物は漏れるし、ずれるし、動き回れないからどうにかしたい」と思っていたようで、江戸末期頃は遊女ではない女性たちも詰め紙を広く行うようになったようだ。もちろん地域差があると思うが、この膣に紙を詰める方法は明治期になっても続き、不衛生だという意見が出ていた。