江戸時代もセックスの痛みに悩んでいた~むかしの潤滑剤をつくってみよう~

潤滑剤

こんにちは春画―ルです。

みなさんはセックスのとき、挿入時の痛みを感じたことがありますか。
性交痛の原因として、コンドームの素材と皮膚の相性が悪かったり、身体が緊張状態で痛みを感じたりと様々です。

わたしは江戸時代の性典物(性に関するハウツーが書かれた指南書)を読むのが好きなのですが、性交痛に悩む人々は現代と同じように存在していたと感じています。
なぜなら、性典物には様々な潤滑剤のレシピや、陰部の傷を治す薬の作り方が掲載されているからです。

性交痛の緩和のひとつの案として、現代では様々な素材の潤滑剤が気軽に購入することができますが、およそ200年前の日本ではどのような方法があったか気になりませんか。
今回はそんな現代の悩みでもある「性交痛」と「潤滑剤」のおはなしです。

嫁入り後の初体験は慎重に

潤滑剤 月岡雪鼎《婚礼秘事袋(こんれいひじぶくろ)》

裕福な家庭で子供が生まれると、その子の母親代わりとして身の回りの世話をする「乳母」がつくことがあった。乳母は娘が嫁入りを迎えると、旦那となる男性とスムーズに交合ができるようにその心構えや方法を教えることもあったようだ。

上の絵は月岡雪鼎の『婚礼秘事袋』と呼ばれる本の中の一図で、婚礼の準備物や夫婦の夜の営みを笑いを交えながら書いたものである。女性がもうひとりの女性の股にお香を焚いている不思議な光景だが、これは嫁入りをした娘の床入りの準備の真っただ中であり、旦那様との営みがうまくいくように乳母が娘の股にお香で香り付けをしている。

潤滑剤 北尾重政《今様風俗/好女談合柱(いまようふうぞく/こうじょだんごうはしら)》

そして乳母が実際に娘の交合に、立ち合い介助をすることもあったようだ。
上の図中で、乳母は「段々と良くなってきますので二度ほど我慢してください」と娘に声を書けている。右側には貝桶(かいおけ)と呼ばれる嫁入り道具が置かれている。
ちなみに、図中の男性が結婚相手であるかは不明である。

当時の性典物の特徴として、高頻度で「新開(あらばち)を割る方法」が掲載されている。
新開とは未経験の女性の性器のことである。
江戸期は現代より嫁入りの年齢が若く、まだまだ少女であるため、初めて交わるときは不慣れなために性器に傷がつくことがあり、これを「嫁痛(かつう)」と呼ぶようだ。
娘が結婚生活での交合を恐れることのないよう、最初は交合に慣れた男性に相手をしてもらうこともあったようだ。

潤滑剤 渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫(けいちゅうきぶん/まくらぶんこ)》

上の内容は、挿入時に女性に傷をつけないためのくすりの紹介である。菓子昆布とフノリと呼ばれる海藻を細かく砕き、亀頭に塗り付けて挿入すると、相手が痛みを感じにくくなるらしい。つまり、海藻のぬめりで挿入の滑りを良くする方法である。

ちなみに《閨中紀聞/枕文庫》では初めての挿入を終え、出血があった場合の性器を洗う薬もいくつか紹介されている。