タイムズスクエアでカウントダウン

6年前、熱烈アプローチを受け付き合い始めた男性がいました。お互い相当盛り上がっており、付き合い始めてまだ2回目のデートでいきなり、熱海まで温泉旅行に行っちゃうくらいの勢いでした。余談ですが、せっかく熱海まで来たのだからと、筆者からのリクエストで秘宝館にも足を運びました。秘宝館エピソードだって、本当はブログ等に書きたかったけど「この人との恋は大切にしたいから、吹聴するのは控えよう」と我慢していたくらいです。それはさておき。

カレは「カウントダウンはニューヨークのタイムズスクエアで一緒に迎えよう」と言ってくれました。筆者は有頂天になり、すぐさま「タイムズスクエア・カウントダウン」で検索しまくりました。すると、タイムズスクエアでカウントダウンを迎えるには「10時間くらい前から場所とりをする必要がある」「良い場所を確保し続けるにはトイレに行く暇なんぞない」「よってオムツを装着して場所とりするのが一番である」という情報を発見!

旅費や英語力は全面的にカレの世話になるのだから、せめてオムツの準備くらいは自分が担おうと決意した筆者。現地アメリカで大人用紙オムツを探しても、日本人にはサイズが合わないかもしれません。だったら日本製の紙オムツを手荷物へ忍ばせる必要があると、カレには内緒で大人用紙オムツのリサーチを始めました。付け心地の良さやら吸水性やら耐久性やら……介護に携わっているわけでもないのに、すっかり大人用紙オムツに詳しくなった筆者。

しかし、ちょうど「色々調べた結果、理想的な大人用オムツはこれ!」と結論が出る頃、筆者はカレに捨てられました。タイムズスクエアでカウントダウンを過ごす予定もなくなり、大人用紙オムツの知識だけが残ったのです。

本音では復縁を打診したかったのですが、勇気が出ず、ひたすらセンチメンタルに浸る日々でした。センチメンタルモードの一環として、都営三田線に揺られて板橋本町駅の縁切榎へ赴き「カレのことを忘れられますように」と参拝したりしましたっけ。これぞまさにセンチメンタル!

復縁を打診したいのに勇気が出ず、ひたすらセンチメンタルに浸っている皆様! 「勇気を出して連絡せよ」とは言いません。いずれは時間が解決してくれますから。そのうち「紙オムツ装着するくらいなら、国内のほうがよっぽどええわい!」と達観できるようになるでしょう。

Text/菊池美佳子

初出:2018.04.16

次回は <サイゼで一番うまいサラダは?行きずりの男が教えてくれるお役立ち話>です。
トクホのお茶で痩せるダイエット法も、小エビのカクテルサラダより美味しいサイゼリヤのメニューも、苦くても添え物のパセリを食べたほうがいいということも、人生で大切なことはすべて行きずりの男から学んだ……。ワンナイトセックスの醍醐味を菊池美佳子さんが語ります。