AVとプロレスのヤラセ

 さて、冒頭に述べたガチギレの話である。あれは2015年12月、いつものようにエロ動画を物色していたときのことだ。

 AVなのにゴールデン番組でパロディもされた“ナンパ・ドキュメンタリー”の名作『テレクラキャノンボール2013』に出ていた素人女性のうち、特別可愛かった札幌の子が、『全国都道府県選抜!現地調達した超S級素人娘 四国編part2』という“ナンパモノ”に出演しているのを、私は偶然発見した。
札幌に住んでいたはずの素人がなぜか四国でまたナンパについていくということは考えづらいし、少なくとも後者がヤラセなのはほぼ確定だ。まあ、それはしかたない。私は「どうかテレキャノだけは、ヤラセじゃなくてガチのドキュメンタリーであってくれ……」と祈った。

 幸運なことに、それから8か月後、私はこの女性が「花城あゆ」という名のAV女優として動画に出演しているのを、また偶然発見した。発売はテレキャノ(2014年2月)⇒花城あゆデビュー作(2015年6月)⇒ナンパモノ(2015年12月)、の順だったので、完全素人だった彼女がテレキャノ出演時にAVに興味を持ち、のちにデビューし、ナンパモノに素人“役”として出演した、という流れだとわかる。

 私はテレキャノの「リアル」が守られた安堵感と、「花城あゆ」を2回も引き当てた自分の強運、そして何よりテレキャノがきっかけでAVデビューした女性がいるということへの感動を、Twitterで報告した。
しかし、あるAV関係者がこれを引用リツイートして、「こういうのは 演出 の一言にかぎる」と吐き捨てたのだ。

 まず、私は「素人だと思っていたらプロだったこと」に驚いたのではなく「テレキャノで『AV興味ある』と言っていた子が本当にデビューしたこと」に驚いているのに、前者の段階にとどまっていると見くびられていることにイラッとした。
そして何よりも、事情通の顔をして、その割には非常に浅いレベルで冷笑主義に浸っている無粋さに、一番腹が立った。
それはたとえば、プロレスファンが「プロレスって八百長だよ、知らないの?(笑)」と言われたときの気持ちにかなり近いと思う。しかもその一言を、当のレフェリーに言われたような最悪な気分だった。

「AV関係者とは仲良くしておいたほうが今後の研究にも得だ」ということは頭では分かっていた。しかし、「業界の人間なのにこの人はAVのことを何もわかっちゃいない」と思うと我慢できなかったので、間を取って、そのツイートをリツイートしたのちにエアリプした。
我ながら気の小さい反論の仕方だ。滑稽だと思うだろうか。だが、私は心底腹が立ったのだ。