同じルールの中でどう見せるかが腕の見せどころ

西尾:今回の5作品は、よく見ると昔のロマンポルノへのオマージュが見られるシーンもあります。塩田監督の『風に濡れた女』ってタイトルは『恋人たちは濡れた』というロマンポルノの名作にかかってるんです。

高木:『恋人たちは濡れた』は、最後自転車で海に突っ込んでいって終わるんですけど、『風に濡れた女』はそれを受けて自転車で海に突っ込んんでからあがってくるシーンから始まります。あと、白石和彌監督の『牝猫たち』には、1972年に公開された『牝猫たちの夜』という作品に出てた吉澤健さんが、重要な役どころで出ていたりとか。

――各々の監督さんが持ってる「日活ロマンポルノ」への思い入れが、作品に反映されてるんですね。映画好きの人だったら、そういうところに注目しても楽しめそう。新ロマンポルノを入口にして、昔のロマンポルノに興味を持つ人も出てくるかもしれないですね。そういえばロマンポルノには「10分に1回は濡れ場を作る」とか「時間は80分程度」とかいうルールがあるってことでしたけど、それは今回も同じなんでしょうか。

西尾:「10分に1回の濡れ場」というルールは前回もありましたが、今回はその他に「総尺80分程度」「製作費は全作品一律」「撮影期間は一週間」「完全オリジナル作品」「ロマンポルノ初監督」というのをマニフェストにしてます。

――10分に1回濡れ場を作るって、けっこう大変じゃないですか?

西尾:10分に1回というと80分の中で20分~30分は濡れ場になるんですよね。それを含んだ上でどうやってドラマを作るかっていうのがまた面白いところというか、腕の見せどころなんじゃないかと思います。

――あと、今回の5作品を観ての印象なんですけど、レズビアンだったり、草食系っぽいダメ男が主人公だったり、どの作品にもあんまりマッチョな男性は出てこないですよね。

高木:昔よりも女々しいですよね。

西尾:やっぱり時代的に男が弱くなってきてるから、昔のロマンポルノみたいに男性がガツガツ女を責めるみたいなのは作りにくいよねって監督もおっしゃってました。

――確かに今回の5作品って、どれも女のほうが強い。迷いがないし、自分の意思を持って動いていて、かっこいいんですよね。

つづく
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Text/遠藤遊佐