提示した2つの条件

 ここからは、自戒を込めて書きます。いわば、反省文のようなものです。
まず、ナンパ男の導きで、老マスターが一人で営むスナックに入りました。
ナンパ男は筆者よりも年下でしたが、このスナックの常連とのこと。そういえば最近、スナックが密かなブームだと何かで読みました。確かに、スナックブームが来ているようですね。
うん、こんなふうに、現代人の生態調査として、参考になる部分もあったので、そのへんは良しとしましょう。

 さて。ナンパ男は、当然の如く、この後セックスという流れを構築すべく、口説いてきました。
心の中では、「出たーッ」と思いつつ、それでも表面上は(筆者なりに)可愛く、「出会ったばかりの人とお泊まりとか、そういうことはできないんですぅ」「ちゃんとお付き合いする前にそういうことって、本当に無理なんですぅ」「ノリが悪くて本当にごめんなさいぃ」等々。最大限のブリッコを尽くしたつもりです。

 するとナンパ男は、こともあろうに、筆者に対して説教を始めました。
「いい歳したオトナが、『付き合う前のセックス』に躊躇するのは如何なものか!」ですって。このとき、筆者の中で何かが弾けました。最大限に尽くしてきたブリッコも、もうここでおしまいです。まずは、「逆だろうが!」と、ナンパ男を一喝!
そして、「大学生だとか20代ならいざ知らず、いい歳したオトナだからこそ、犬猫じゃあるまいし、誰かれ構わずセックスするのは如何なものか!」と、言い返しました。

 案の定、ナンパ男は「じゃあ付き合おう」と。はい、上野ナンパと同じ流れです。ここで上野ナンパと同じ返しをしては、ネタになりません。筆者は条件提示しました。「付き合うなら、今日はセックスしない。付き合わないなら、乗り掛かった舟と思ってセックスするが、連絡先交換はせず、1回ポッキリでで終わらせたい」と。
ナンパ男にとっては、かなりの好条件です。なぜ、こんな好条件を提示したのかと申しますと、アム読者の皆様に、男とはしょうもない生き物であるということを、身をもってお伝えしたかったから……というのは建前で、ぶっちゃけさっさと帰って寝たかったのです。なんてったって翌日は早朝から仕事が入っておりますし。

 もちろんナンパ男は、後者を選択しました。ね、ね、男ってウンコな生き物でしょ?

パンツ貰っていい?

 そしてスナックを出て、筆者のマンションへ。道すがら、「前戯も後戯もナシで、洋服も下半身のみ脱ぐ形で夜露死苦!」と、釘を刺しました。そして部屋に到着。事務的に、自らスカートとパンツを脱ぎ、引き出しからコンドームを出して、「さっさと挿れて、さっさと射精してくれたまえ」と、仰向けに寝っ転がる筆者。
ナンパ男は、「こんなオンナ、見たことない!」と言わんばかりの表情になっていました。

 で、セックスが終わりました。
最初に「後戯もナシ」と条件提示していたわけですから、「さっそくですが、お帰りください」と、強制送還の手続きに入ろうとしたところ、アンビリーバボーな返答が!
「パンツ貰っていい?」ですって!
上野ナンパの回にも書きましたが、筆者のモットーは、「「洋服は数千円でも、下着は数万円」。高級おパンツを、なんでくれてやらねばならぬのだッ! ですが、譲渡してやることにしました。さっさと寝たかったのです……というか、この状況を一分一秒でも早く終わらせたかったのです。

 こうして、やっとこさナンパ男を帰しました。
一気に脱力した筆者は、カバンの中で冷えきったファミチキを頬張りながら、「オトコを甘やかしてしまった」と、うなだれたのでした。

Text/菊池美佳子

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