「お茶でも飲んでく?」

 そんな可愛い笑顔で誘われたら、断れなかった。
言葉に甘えて彼のリビングでくつろぐことにした。
一夜限りの関係も大好きだが、一夜限りのお茶も大好きなのだ。
さっきまで親密な時間を共有していたからか、会ってまだ一時間ちょっとなのに、もうだいぶ打ち解けている。
お互いの肉棒をしゃぶしゃぶしていれば、それよりも恥ずかしいことはなかなかない。
気がつけば数時間話し込んでしまった。
彼が貧しい国の生まれだったことや移民としての苦労話、過去のセックスや恋愛話など、ごっそりディープにシェアしてくれた。
このまま本でも書けそうなくらい相手を知ることができた。

 実はこれが一夜限りの関係の醍醐味の一つでもある。
とても短い時間の間に、今までにあったこともない人とここまで近づけるのだ。
大げさかもしれないが、相手の人生を垣間見れてしまう。
リスクやデメリットは多いかもしれないが、それがあるから一夜限りの関係はやめられない。
彼の家を後にしてから、もうお互いに連絡は取っていない。
一夜限りの関係だからもう会うこともない。
それでも、彼のことはいつまでも心のどこかに覚えているだろう。
なぜかそんな気がした。

Text/キャシー