「もっと肩の力抜いて、間違えることを楽しめばいい」
シンプルに聞こえて、実に難しい。どうすれば間違えることを楽しめるのだろうか。
授業だけではなく、社会の中では様々な場所で正解を求められる。
間違えることはダメで、恥ずかしくて、避けたいものだ。
セックスだってそうだ。
少しでも間違えれば下手というレッテルを貼られてしまう。
それを今更楽しめだなんて、悪い冗談にさえ聞こえてしまう。
さて、回想をしていたらすっかりセックスが気まずくなっていた。
心配そうにこちらを見つめる相手と目が合った。
少しの失敗を気にするあまり、全然セックスを楽しめていない自分がそこにはいた。
新しい人とセックスをする度に、ゼロからのスタートとなる。
自分と相手という生まれも育ちもきっと違うふたりの人間が、どう絡み合うのかはやってみるまでわからない。
試行錯誤がなければ、何も学べない。
何も学べなければ、セックスが気持ち良くなるわけもない。
正解を見つけることばかりに気を取られて、間違えることを恐れていては、何も楽しめない。
今更自分の中に植え付けられた恐怖心を取り除くのも大変なので、もう開き直ってしまおう。
間違えることに怯えている自分に手を伸ばして、友達になってみよう。
「間違ってもいいじゃん!」
そう声をかけて、できることを試してみればいい。
それが成功すれば、そこからまた別の道が見つかるだろう。
それが失敗なら、また違うことを試してみる。
好奇心も誘い出してアドベンチャーに出ればいい。
大事なのは、お互いが楽しく気持ち良くなれるかどうかだ。
「大丈夫?」
痺れを切らした相手の声で現実に戻って、またセックスを再開した。
まだ冷や汗はかいているが、良い汗も混じっていた。
Text/キャシー
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