他人の性癖を「キモ!」と思ってしまうときは物語の力を借りよう

官能小説家としてはわりと欠点だと思うのですが、どうにもこうにも、近親相姦が苦手です。父親×娘はもちろん、母親×息子、姉×弟、兄×妹という、どのマッチングであっても「キモ!」と思ってしまうし、なんなら親子丼(※親と子、両方と肉体関係を持つこと)にも、少し抵抗感がある。

苦手なら書かなければいいだけのことなのだけども、書けない自分には腹が立つし、さらに、「性について両者が合意してする行為を、否定したくない」という気持ちもわたしの中にある。だってわたしだって、ある人たちから見たら「えっ!  そんなことすんの!?」という行為を好んでしたり、「そこに興奮するの?」と笑われるような嗜好もある。そこを頭ごなしに「キモ!」と否定されると、やっぱり傷つくので、わたしも人様の欲望について、否定したくないと思うのです。

そう頭では思ってはいても、「キモ!」というのは感情の問題なので、なかなか納得するのは難しく、心がざわざわとしてしまうのも確か。とはいっても普段の生活を送る中で「実はわたし、父親とデキていて」とか「俺、母ちゃんとヤってるんだよね」といきなり言ってくる人はなかなかいない。なので、「近親相姦をどう受け入れるか」なんてことは、そもそも、考えないでも生きてもいけるけれど、わたしには、特定の性の形に差別的感情を持っている自分に、どうにか落としどころを付けたいという思いがある……とここまで書いて気が付いたのは、そもそも官能小説家だからって、性的な行為のすべてを許容しないといけないワケではないし、これはむしろ、職業とかは関係のない、己のこだわりの問題ですね。