目先の怒られを回避するタイプ

私の文章はよく「誰も傷つけないように全方位に配慮してある」と褒めていただくことがあるが、それは誰かを傷つけて怒られるのが嫌だからである。
よって「誰向けでもない」「メッセージ性皆無」「虚無」という感想もよくいただく。

このように、怒られるのが死ぬほど嫌いなため、怒られる気配を感じると、とっさに嘘をついてしまったり、嘘とまではいかずとも、隠ぺいをしてしまうことが非常に良くあるのだ。

ただこのタイプは、目先の小さな怒られを回避するために、嘘や隠ぺいを繰り返してしまうため、最終的に周囲に多大な迷惑をかけた上に、結局死ぬほど怒られるということになりがちである。

会社でも最初のトラブリューの時点で、報告するなり謝るなりしておけば、小さな怒られで済んだものを隠したりはぐらかしたりで15章ぐらいまで引っ張ってどうしようもなくなることが多かった。

会社を辞め、1人で仕事をするようになり、自己保身のために他人に迷惑をかけることがなくなったのは本当に良かったと思う。
ただ、今は幸い、嘘をついたり、隠したりすることが大してないだけで、夫に対して嘘をつくことはあまりないのだが、やはり怒られの気配を察知した時はとっさに嘘をつくことはあるし、今後何らかトラブリューが発生したら、隠したり嘘をついてしまう可能性は大いにある。

ただ家族間の、嘘や隠ぺいというのは、ある意味会社よりも致命的で修復不可能な結果を生むことがある、リストラされたり、FXで住宅購入の頭金や、子どもの貯金を溶かした場合は、3か月ぐらい出社するフリをするのではなく、早めに言った方が良い。

夫は私に嘘をつくか、というと何せ私は自己中心派である。
つまり他人の言動をそこまで注視していないので、夫が何か隠したり、嘘をつかれていてもおそらく気づかない気がする。

多分夫も、面倒を避けるため小さな嘘や隠しごとはしているとは思うが、私よりは自己中心的ではないし、隠ぺい体質ではないと思う。

そんな夫であるが、保険関係の仕事をしており、多くの保険業務従事者がそうであるように、己もかなり保険に入っている。
そして、ある日、他の名目で共同口座に積み立ていた貯金が最近入っていないので、問いただしたところ、それを勝手に保険に回していたことが発覚した。

そもそも私が夫に怒れることがほとんどないので夫に怒ることは稀なのだが、その時は今までで一番激怒した。

このように、あまり自己中心的でない人間が、こっそり自己中心的な行いをし、生粋の自己中に激怒されてしまうのが「保険」という仕事である。
営業の才能がなければ絶対ついてはいけないし、配偶者にしてもいけない。

Text/カレー沢薫

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