説明したくないし外で働きたくもない「結婚記念日の話」

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 今回のテーマは「結婚記念日の話」だ。
この10月10日に我々は何回目かの結婚記念日を迎えた。何回目かというと8回か9回だが10回ではないだろう、という感じだ。良くある結婚記念日だ。

 今これを書いているのが10月12日だが、10日当日に特にお互いコメントはなかった。ただ今週末にでも、いつも通り一緒に飯を食おうという話にはなっている。

 夫と飯を食うのは割と憂鬱である。
まず外に出なければいけないのが一番の難点だ。考えただけでも引きこもりがちになる。
何度でも言うが、私は自室神推し同担拒否過激派だ。あまりに過激すぎて私の部屋というジャンルが過疎ってしまい、今は謎の羽虫しかいない。どこかから沸いているのは確かだが、そのどこかを特定する勇気が今のところない。

 外出という地雷に比べれば大したことではないが、いつも通り「話すことがない」のも気が重い。
喋れないコミュ症というのは、自分は喋らない上に他人の話も聞いていないのだが、何故か無言を恐れるという習性があるため、たとえ相手が夫でも無言は気まずいのだ。
そして、無言に耐え兼ね「いらんことを言う」のがしゃべれないコミュ症最大の特徴である。

 先日も無言に耐え兼ねて「うちの家、近所から“生活感を感じない謎の家”として不気味がられているらしいよ」というすべらない話を披露したら、見事に暗い顔をされた。

 他にも、私の夫は出版関係者に「女作家の夫なんてマネージャー気取りのヒモ野郎ばかり(個人の感想です)なのにカレー沢さんの旦那は働いていて偉い」とよく言われるので「働いてて偉いってよ」と言ったら、普通に気分を害されたことがある。

 どうやら彼とはギャグセンスがあわないらしく、私が夫に対して冗談を言うと大体ドンずべるか、怒らせてしまうのだ。
ちなみに今一番言ってはいけないのは「今ごく一部であなたのことは“ナイトメア”と呼ばれている」である。

 よって最近では夫と飯を食いにいく時は「今まさに食っているこの飯が美味い」という話ぐらいしかしない。
だが無言よりも嫌なのは「夫は言いたいことがある場合」だ。