ところで最近、珍しく夫と二日連続外食をした。

何でも夫が勤続20年したので、会社から金一封をもらったという。
それだけでも驚愕した。私が、何回も職を転々とし今生粋の無職というキャリアアップをしている間、夫はずっと同じ会社で働いていたのだ。
その金一封は「三万円」だったが非常に重みのある三万である。それにも係らず、その金で「一緒に肉を食べに行こう」と言うのだ。
さらに、肉を食っている間、今公開中の「ステイサムとサメがタイマンを張る映画が見たい」と言ったら、つきあってくれた上に映画代もその日の夕飯もその三万から出してくれた。

逆に私が、突然「三万円」を与えられたらどうするか。
間違いなくガチャだ。もちろん夫には「三万円」の存在すら明かさないだろう。
夫は冗談で「残りはパチンコに使う」などと言っていたが、私なら「最初からガチャ」だ、残すつもりもない。

夫とて聖人君子ではない、おそらく小狡いところもあるだろう。

それでも私に比べれば圧倒的に善人だなと思った次第である。

Text／カレー沢薫

夫婦コラムのはずの本連載が、土方歳三への愛を綴った廃人日記として書籍化されました。

愛に生き愛に死ぬカレー沢さんのガチャ爆死録は必見です！