夫が何も言わなかったのでなんとかなっていた「夫婦の食卓」

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 今回のテーマは「夫婦の食卓」である。

 我々は基本的に一緒に飯を食わない。
それは私が無職になってからも変わらず、18時ぐらいになったら私は1人で食べている。夫が帰って来るのを待っていたら餓死してしまうからだ。

 しかし「同じものを食べる」ようにはなった。
会社員をしていた時は、夫は夫用に作った夕飯を食べ、私は毎日クソ盛りペペロソチーノを食っていた。あまりに毎日食い過ぎて、5回ぐらい夫に「臭い」と言われたので、その時だけ「ミートソースに変える」等の策を取っていたが、基本的に土日以外はペペロソチーノを食っていた。

 何でそんなことをしていたかというと別にペペロソチーノダイエットというわけではなく、マジでそれ以外、一日の楽しみがなかったからだ。
無職になった今だから思うが、やはり朝起きて仕事に行って仕事から帰って仕事して寝る、という生活は正気ではなかった。
寝られないというほどではなかったが、他のことをする時間がなく、万が一、私に友達や趣味なんかがあったらそれらとの縁を一切切らねばならず、狂を発していたと思う。つまり「友達がいたら即死だった」である。いなくて首の皮一枚つながった。

 そして、もう一つ私の精神を支えていたのがペペロソチーノである。
仕事から帰って仕事をはじめるまでの間、このペペロソチーノ(二人前)を食いながら、ギャンブルの借金で困っている人とかのブログを見る、このひと時だけが私の心の四散を食い止めていた。「心は油(オリーブ)で出来ている」とはまさにこのことだ。

 しかし晴れて無職となり、ストレスは激減したと言える。現にギャンブルの借金で困っている人のブログはそんなに見なくなった。これは無職になってそういう人たちが他人事に思えなくなったせいかもしれないが、多分ストレスがなくなったおかげだし、代わりにアルコール依存症の人のブログとか見るようになった。

 そして無職になったことを機に、ペペロソチーノを止め、夫用に作っていた夕食と同じ物を私も食べるようになった。