まず最初のお題だが「結婚を決めた理由」だ。
私が夫婦のことをあまり書きたくないのは、単純に恥ずかしいというのもあるが、特におもしろい話が書けるとも思えない、というのも大きい。
前述の通り、私は二次元の男が大好きだ。しかし、自分が付き合いたいとか結婚したいとか思ったことはあまりない。乙女ゲーなら、私とは別の存在であるヒロインと二次元のイケメンが恋愛する様を楽しむ派だし、漫画とかなら、そのキャラが同じ作中に出てくる女性キャラとくっついてほしいと思っている。
つまり子どもの時からずっと「恋愛とセックスは自分がするものではなく、他人がしてるのを鑑賞するもの」と思っているのだ。
自分はそれに対し「oh…」とか「yeah…」とか合いの手を入れる役であり、最後に「尊い…」と言い残して死ねれば、それでいいと思っている。

リアル結婚生活の話をするはずが、当初の予定通り気持ち悪い話になってきてしまっている。

しかし、そんな気持ち悪い私も高校卒業ぐらいから「人並みに自分自身が恋愛をしたい」と思い始めた。
それからメル友募集掲示板で出会った男に顔を見るなり帰られるなど「人生の黒歴史は大体そこで作った」というような時間を過ごしたのだが、元々、破天荒さに欠ける性格だ。出会い系で知り合った男と真面目に４年付き合って別れる等、いまいち弾けきれないでいた。

夫と出会ったのは２３歳の時だ。まだ「自分が恋愛したい期」が続いていたため、当時勤めていた会社の同僚に「誰かいないか」と問うたところ、連れてこられたのが夫である。
その後、二人で数回会い、交際することになり、それから５年ほど経って結婚した。
プロポーズは特にない。指輪を買いに行こうと言われたので、そういうことなのだなと思い、特に抗うわけでもなく、周りに反対されることもなかった。

来客に生米を出すがごとく、つまらない文章である。実際夫とのなれそめを人に話すと大体が「普通だね」と言うので、そのつまらなさには定評があるのだ。
結婚を決めた理由というより、結婚しない理由がなかったという方が正しい、流れである。しかし「色々障害はあるけどこの人と結婚したい」というより「特にしたくない理由がない」という方が良いような気もする。それだけ相手に目立った問題がないということだし、現に夫は今も特に問題がない人だ。（私の方に問題は多々あるが）

つまり、すでに次書くことが何もないのである。やはりこのコラムは「私の上を通り過ぎていった男たち（全部二次元）」という題で、平面から出てこない男との結婚生活を書くのが一番エキサイティングなのかもしれない。

Text/カレー沢 薫

※2016年9月29日に「TOFUFU」で掲載しました