乳首のトレンド

 『我がおっぱいに未練なし』には笑いもふんだんに詰まっている。

たとえばニュー乳首の形成手術について、二村ヒトシ監督に相談する場面。

「自分の乳首を作ることなど考えたこともなかったので、私に理想の乳首はない」という川崎さんが、乳首のトレンドについて尋ねると「乳首には流行というものがない」「シンメトリーを目指しましょう!」とのアドバイスをもらったそうだ。

乳首について真摯に語る二村さんの姿が目に浮かぶ。

ちなみに片方の乳首を半分切って移植する方法もあるそうだが、乳首がめっさ小さい人はどうするのだろう?米粒サイズになるんじゃないか。

また「ありがとう!老眼!」と老眼に感謝する場面でも笑った。そして「40代になって一番最初にガタがきたな、と思ったのは目、そして次に歯だった」というJJあるあるに深く頷いた。

私も眼鏡をかけないとノーパソの画面がかすむし、ノーパソをノーパンと空目する。かつ、壊れたロボットのように歯のかぶせが取れていく。

もう一生、ハイチュウを口にすることはないだろう。ミルキーなどもってのほかだ。

そんなたくさんの笑いと共に、この本には「夫婦とは?」「結婚とは?」「家族とは?」といった問いの答えが詰まっている。

手術から約1ヶ月後、家族で保険金旅行に出かけた川崎さんは考察する。

「男女に本当の友情があるとしたら、それは夫婦にではないだろうか?」

「たとえどんな困難があっても、家族のためにメロスばりに走って帰ってくるという実績と信頼を、私たちは互いに着々と積み上げてきたからかもしれない」

血のつながりもない、もとは赤の他人だった二人が、実績と信頼を積み上げて家族になる。

私と夫も結婚12年の間に多くのものを積み上げてきた。

拙書『59番目のプロポーズ』のラストに「私たちは、絶対に離れない。ここに誓います」と書いたが、正直「とはいえ、別れるかもしんねえな」と思っていた。

だがこの12年の間にいくつかの困難…母の入院と死、老猫の介護、私の子宮全摘手術などを乗り越えて、我々の結束はどんどん強くなっていった。

マラソンは学年ビリだった私だが、夫の危機にはメロスのように駆けつけるだろう(全裸で)。夫も邪知暴虐の王を関節技で締め落としてくれるだろう。

そんな友情パワーでガッチリとタッグを組むのが、夫婦なのだと思う。