賑やかなカレー沢家で過ごした「夫婦の休暇」

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今回のテーマは「夫婦の休暇」である。今年は無職になってから初めての正月だった。

無職になってからの気づきはいろいろあるが、一番の発見は、無職は世間一般の連休が全く楽しくない、という点である。
まず週休七日なのだから休日という概念がそもそもない。
むしろ無職が全てを失って得た「長すぎる休み」という特権を社会保険とかに加入している下々の者までもが享受してしまう正月含む連休というのは、何のために無職をやっているかわからなくなる。

それどころか、義理の親戚回りや義務の初詣など、無職にしたらいつもより「やることが多い」「人間と会話しなければならない」のが正月なのだ。
しかも親戚のあつまりにおいて「健康な無職」というのは、酒の肴、もしくは「目を合わせてはいけないもの」扱いなのである。
そんな、新年団欒の間を一気に事故物件にしてしまう存在なので出来るだけ人前に出たくない。よって無職はひきこもりがちになるのだ。

これがかの有名な哲学「ひきこもりが先か、無職が先か」である。

私も無職としてさらに徳を積めば、盆だろうが正月だろうが部屋から出ず、親戚も一切それに触れないという、まさに「我が家に勝手に住んでる神」状態になれる日が来るかもしれないが、何せ今は無職1年生である、今回は諾々と両家の実家に行くしかなかった。

正月は無職にとっても嬉しくないが、既婚者にとっても嬉しくない場合がある。特に多くの「嫁」が狂を発するイベントとしても有名だ。
その点私は「人生の全てを近場で済ました」という強みがある。実家が両方近いため、どちらも日帰りで終えることができる。
人によっては「義実家に二泊以上」というエクストリーム正月を毎年キメなければいけない、という人もいるだろう。それに比べれば数時間、無職らしく一言も発さずその場にいるぐらい容易いことである。

そんなわけで今年も両家実家に行ったのだが、私の実家と夫の実家はある意味で対照的である。
夫の実家は、下は保育園児、間にJKもいるという、割と若い集まりなのだ。
片や私の実家はアラフォーになった私が最年少、平均年齢は悠に50を超えている。

このように繁殖能力の差が如実に出てしまっているのだ。
しかし夫の実家の集まりは賑やかで、私の実家はお通夜ムードかというとそんなことはない。
子どもは確かに自由で騒がしい。しかし老化も一線を越えると賑やかになってくるのだ。