夫婦と猫とスピリチュアル事件/59番目のマリアージュ

私はスピリチュアルとは距離を置く人間だ。

これは個人的なスタンスであり、他人様のことに口出しするつもりはない。

女友達の部屋に遊びに行き、枕元に『自分の周りに良いことばかり起こる方法』みたいな本が置いてあったら、「彼女の周りに良いことばかり起こりますように…」とそっと祈って、見なかったフリをする。

そこで「何この本?こんなのに頼ってちゃダメだよ!」と説教する気はさらさらない。

私自身、恋愛も人生も地獄絵図だった二十代後半、占いに通った時期があった。当時の私は悩みに悩んだ挙句「もう考えるのが面倒くさい!誰か正解をくれ!」と思考停止していた。

スピリチュアルをエンタメ的に楽しむぶんにはいいが、悩んでいる時にハマると思考停止を招くし、シャブのように依存しがちだ。

二十代は悩むのが仕事みたいなものなので、周りにもスピリチュアルをキメまくり、ヤバくなってる女子が多かった。

占い師に「今年中に白い服を着た人と出会って結婚する」と言われた女友達は、白い服を着た男に出会うたび「あの人かも…」とフラフラ引き寄せられていた。そんな彼女の肩をつかみ「あれは白じゃない、薄紫だ!しっかりしろ!」と揺さぶったものである。

その後、彼女は再春館製薬の人とかじゃなく、昔から知っている男友達と結婚した。

浮気・DV・借金と三拍子そろった彼氏と付き合いつつ、「占い師に運命の人だと言われたから」とズルズル別れられない女友達もいた。占い師に「彼とは最高の相性、運気的には今年中に結婚すべき」と言われて、付き合ってすぐの彼氏と結婚、同居後に夫が重度のマザコンだと発覚してスピード離婚した女友達もいた。

「占いでも私は良いことだけ信じるから」と言う人は多いが、良い・悪いの判断を他人に委ねてしまうのが問題なのだろう。

自分で悩んで考えて選んだ道であれば、たとえ失敗しても納得がいく。でもそうじゃないと他人のせいにしてしまう。そんな人生はイヤだから、私は「自分の船の船長は自分」「自分の選択が未来を作る」を標語にして、スピリチュアルとは距離を置くことにした。

一方、夫は大槻教授ばりにアンチスピリチュアルを貫く立場だ。

彼は大抵のことは受け入れるアナルガバ夫だが、「もしキミの部屋にサイババの写真とか飾ってあったら、結婚を躊躇したと思う」と言っていた。

そういう本人の部屋にはナイフとエアガンが飾ってあったが、私もサイババよりは銃刀類の方がマシだ。

出会った当初、夫は私にデート商法の疑いをかけていた。そのため、初めて我が家に招いた時も「詐欺グループのあじとに連れていかれるのでは?」と警戒していたらしい。

が、いざ部屋に入ってみると「猫に引っ掻かれて壁もボロボロだし、あじとではなさそうだ」と安心したという。

一方の私は、初めて部屋を訪れた夫を見て仰天した。なぜならば…