女子校を始めた理由

「『マジで?お母さん(お父さん)、いい人そうなのに…』と言われてつらかった」

 モラハラ夫と同様、外面がよくて「理想的な親」に見える毒親もいる。無職のパチンカスとかじゃなく、社会的地位の高い毒親もいる。
そういう毒親を持つ子どもは「話しても信じてもらえないんじゃないか」という不安が強い。

 それでも勇気を出して告白した時に、上記のリアクションをされると「やっぱり信じてもらえなかった」「私が嘘をついてると思ってるんだ」と傷ついてしまう。

 相手に悪気はなくて「マジで?」は単なる口癖だし、「いい人そうなのに」もついポロッと出た感想なのだが、これまでさんざん傷ついてきた毒親育ちは、反射的に傷つくのだ。

 逆に「親友に打ち明けた時に『まさかあのお母さんがね…いい人そうに見えるから、余計つらかっただろうね』と言ってくれて、自分を信じてくれたことが嬉しかった」という声もあった。

 また「『私も反抗期は親と揉めたけど、大人になったら仲良くできるようになったよ』と友達に言われて『こっちはいつも親の顔色を窺って、反抗期なんてなかったのに…』とつらくなった」という声もあった。

 健全な親子関係の場合、思春期に反抗期を経て「親離れ・子離れ」が進むが、毒親育ちは親に反抗なんてできない。そのため、親は絶対的な支配者として君臨し続ける。

 ちなみにうちの母親は毒親図鑑でいうと「ねぐれくと」「あるちゅう」の分類だが、私も生き延びるのに必死で、反抗期どころじゃなかった。

『子どもを産んだら、親の大変さがわかって感謝するようになった』と言われるのが一番つらい。私は母みたいになるのが怖くて、子どもを産むのが不安でたまらないのに」という声もあった。

 そもそも子どもを産んで感謝できる時点で、毒親じゃないだろう。 毒親育ちのママさんたちは「子どもを産んで『うちの親は本当にヤバい親だったんだな』と再認識した」「死んでもあんな親にはなるまい!と思って、親にされてイヤだったことは絶対子どもにしない」と語る。

 毒親カムアウトをされた時は「余計なことを言わない」のが一番だ。

 気のきいた言葉やアドバイスはいらないから、否定せずにただ話を聞いてほしい。そのうえで「それだけ傷ついたんだから、親を憎んで当然だよ」と肯定してほしい。「それでいいのだ」とバカボンのパパになってくれたら、心の底から救われる。

 嬉しいリアクションはシンプルなのだ。

「大変だったね、話してくれてありがとう」
「親と仲良くするのが正解じゃないよ」
「誰が何を言おうと、私はあなたの味方だよ」

 この3つの言葉だけで十分なので、箸袋の裏にメモってほしい。それを胃袋にしまっておいてくれてもいい。

 また「ひどい!」「ヤバい!」というシンプルな相づちも嬉しい。毒親育ちは「腫れ物扱いせず、今までどおり普通に接してほしい」と望んでいるから。

 ちなみに私が一番ムカつくのは、毒親育ちによる毒親育ちへの説教である。「うちも毒親だけど、結婚式には呼んだよ!それがケジメってもんでしょ」みたいなやつ。

 熟女入門のコラムに「クインビー症候群」について書いたが、これも「私は親に傷つけられても我慢してるんだから、あなたも我慢するべき」という女王蜂の発想だろう。

 約20年前、「うちの親はもっとひどかった、それぐらいでメソメソ言うな」と抜かしやがったクソ女のことも、今もひたむきに呪っている。私はやる気も根気も五木のセレットもない人間だが、呪いの持久力だけは負けないのが自慢だ。
五木のセレットがわからない人は、西日本出身の年寄りに聞いてみよう。

 そのクソ女王蜂女には、女郎蜘蛛の詰め合わせセットを贈りたい。昆虫ギフトセットの送り先が多くて大変だ、フェリシモか千趣会で商品化してくれないか。

 当時の私はその女に何も言い返せなくて、家に帰ってメソメソ泣いた。20代の私はメンが細くて、毒親のことを人に話せなかったし、話そうとすると涙があふれて声がつまった。

 そこから時は流れ、40代の太メンJJの私は全世界に向かって鼻クソをほじりながら話せる。毒親の呪いを卒業したからだ。卒業できたのは、自分でも飽きてゲップが出るぐらい、吐き出しまくったからである。

 それが、私がオンラインサロン「アルテイシアの大人の女子校」を始めた理由の1つだ。
我が校の生徒さんは毒親育ちが多い。彼女らが「この人たちならわかってくれる」と安心して吐き出せる場所を作りたかった。

 ちなみに女子校では、秋に芋ほり遠足をしようかと企画している。その時、みんなでトンボやカマキリなど、昆虫採集をするのもいいかもしれない。

次回は<アルテイシア×こはなみみこ対談①「ダライラマ夫の見つけ方」>です。
毒親育ち、セクシュアルマイノリティ、発達障害など多数の生きづらさを抱えるこはなみみこさん。そんな彼女はヘテロセクシュアル男性と結婚。生活を共にするパートナーとして最高の相手っていったい?アルテイシアさんとの対談です。

最新刊発売!

 過去10年間に執筆したエロコラムが詰まった『アルテイシアの夜の女子会』が2018年2月7日に発売。表紙はTOFUFUでも連載してくださっているカレー沢薫さんのイラスト。BL研究家・金田淳子さん、妖怪作家・ぱぷりこさんとの対談も収録。

待望の電子書籍化!

 入手困難となっていたアルテイシアさんのデビュー作が待ちに待った電子書籍化!
本連載でおなじみの59番さんとの出会いが綴られています。

 59番さんと出会う以前の恋愛経験を綴ったこちらも電子書籍化!
あわせてチェック!

大ヒット発売中!

 アルテイシアさんが自信がない・出会いがない・付き合えない・好きにならない・もう若くない・幸せな恋ができない・SEXしたことがない・女らしくできない・結婚できない…そんな悩みを解決。
パートナーを得た女性も、より魅力的な女性になるためにどうぞ♪