毒親図鑑

 医者一族で落ちこぼれ扱いされてきた六郎が、大学病院の教授である父親に「自分の将来はUDIラボで働きながら考えたい」と告げると、父親は「そうか…二度とうちの敷居をまたぐな」と返す。

 それを見て「ヨシ!!!さすが野木亜希子さん!」とガッツポーズした。
そこで親子が「そうか…お前も大人になったな」と笑顔で和解したら、私はガッカリして『アンナチュラル』の視聴をやめたかもしれない。

   そんな簡単にわかりあえるぐらいなら、そもそも苦しんでないのだ。
「今度こそわかってくれるかも」と何度も期待しては裏切られ、そのたびに絶望して、「親とわかりあうのは無理」と諦めることで、毒親の呪いから解放される。

 そして「親に認められなくていい、自分のやりたいことをしよう」と決意することで、自分の人生を生きられる。「血のつながりなんて関係ない、大切な人を大切にしよう」と思うことで、自分の帰る場所を作っていける。

 そうやって、毒親に奪われたものを取り戻していくのだ。

 ということを、小さい子ども達にも知ってほしい。毒親ポルノに傷つかないためにも、学研の図鑑シリーズに「毒親図鑑」を入れてくれないだろうか。

「もらはら」「かかんしょう」「ねぐれくと」等の解説とともに「有害な親からは逃げるべき」「親を嫌いでもいい、殺したいほど憎んでもいい」「でもリアルに殺すのはやめようね、困った時はここに相談を」と窓口を載せてほしい。
そうすれば、救われる子どもはいるんじゃないか。

 思春期の私は、親のことを誰にも相談できなかった。周りの友達は「またお母さんとケンカしちゃった」と悩んでいたが、「またお母さんが泥酔してリスカしちゃった」という話はできなかった。
そして「どうせ話してもわかってくれない」と孤独と絶望を深めていた。