モラ山ハラ夫

 私の周りにはバツイチで再婚したJJも多い。そのうちの1人、旧友のA子は才色兼備のバリキャリ美女だ。

「だめんずにハマる女子は自己肯定感が低い説」があるが、A子は「私は自己肯定感は高い」と分析していて、私もそう思う。
なんせ彼女は、趣味がサンバだ。私のようなインドア派はサンバと言われると、ブラジル娘の尻よりもキャプテン翼の主題歌を連想する。

 ジグザグサンバはさておき、陽気なラテン系の彼女は「私は草食系男子に萌えなくて、男っぽい肉食系が好みなのよ。それでグイグイ口説いてくる元夫にときめいてしまった」と振り返る。

 彼女のようなバリキャリ美女は男に尻ごみされがちだ。そこをグイグイいく男は自信満々の傲慢なエゴイストか、トロフィーワイフを求める見栄っぱりのナルシストが多い。

 A子の元夫は自分優先で他人を尊重できない、モラ山ハラ夫だった。

 モラ山ハラ夫は米国駐在で転勤族だったのだが、「転勤する時、私が『またイチから仕事も人間関係もやり直さなきゃいけないのか』と言うと『そんなのわかって俺と結婚したんだろ』と突き放されて、話し合いもできなかった」と語るA子。

 わかってるからといって、つらくないわけがない。感情は感覚と同じで理屈じゃない。トゲがあるとわかっていても、触ると痛いのと同じだ。

 モラ山ハラ夫は人の感情がわからない、サイコ田パス夫でもあった。すったもんだの末、A子は夫と別れて日本に帰ってきた。
離婚後しばらくは疲弊しきっていたが、傷が癒えた頃に「次はあえて好みじゃないところを狙ってみよう」と草食系のオクテ男子と付き合い始めた。

 そして離婚の反省をいかして、お試し同棲を2年ほど続けてから、その彼と再婚した。
「彼は傷つきやすくて、わりとすぐ泣くし、昔の私なら『ナヨナヨして男らしくない』と選んでないと思う。でも元夫は強いけど冷たい人で、彼は弱いけど優しい人で、私には彼みたいな人が合ってたみたい」

 そう語る彼女は穏やかで子煩悩な夫と子育てしながら、バリバリ働いて、サンバを踊っている。幸せそうな姿を見ると「前の結婚も離婚も無駄じゃなかったんだな」と感じる。

 ちなみにモラ山ハラ夫は連絡先もわからず、生きてるか死んでるかも知らないという。一度結婚したってそんなものだ。みんなもっとカジュアルに離婚すればいいと思う。