ゴネる権利剥奪されがち

離婚を申し出られたとしても、こちらにだってゴネる権利がある。
ただそのゴネ権は、具体的に「お前が悪い」という要素が多ければ殆ど剥奪されてしまうのだ。

不倫などしていたら、いくら離婚しとうないとゴネたところで、調停や裁判になれば不倫したお前が悪いということで離婚が成立してしまうのである。

緑の紙を出されたとしても、客観的にお前が悪いという要素がなければ、離婚を拒否したり、最終的に離婚になるとしても、慰謝料など一方的に不利な条件で離婚しなくて済むということだ。

つまりどちらかというと成敗される側な我々は、来たるカスタトロフィに備え、できるだけこちらが有責にならないように日々振る舞わなければならない、ということである。

不倫や暴力を振るわなければ大丈夫、というわけではない。
確かにこの両者であれば、意識的にやらなければ済む話であり、脇見運転してて気づいたら知らない人に挿っていた、というウッカリ不貞はあまり起こらない。

だが最近は「モラハラ」もDVの一種として扱われ、相手有責での離婚が認められるケースが増えている。

暴力や不貞と違い、モラハラは無意識に行われることが多いため、不倫はしていないし殴ってもないから大丈夫、とたかを括っていたら「モラハラ記録全82巻」を触媒に離婚に強い弁護士(☆5)を召喚した配偶者に一番こちらにダメージがでかいタイミングで緑の紙(ザイサンブンヨナシイシャリョウセイキュウ)という宝具をぶっ放されてしまう。

だが、モラハラという言葉をよく聞くようになったとは思うが、具体的にどのような行為を差すかは正確に知らないという人も多いのではないだろうか。

知らないからこそ、無意識にやってしまい「そんなつもりじゃなかった」という、言い訳にもならない言い訳を裁判官の前で言うはめになってしまうのである。

一度、モラハラの定義を調べておけば「これ裁判で証拠になるやつじゃね?」と言う意識が働き、モラハラ行動を抑えられるかもしれない、これは相手にとっても良いことである。

我々は、悪を成敗するヒーローにはなれない、しかし「なかなか有責証拠を出さない小悪党」ぐらいにはなれるはずだ。

これが第一話見せしめ死で消えるモブの意地だ、今すぐ「モラハラとは」で調べてヒーローどもを手こづらせてやろう。

Text/カレー沢薫

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