お前が悪ければ離婚を迫られてもゴネ権は剥奪される/カレー沢薫

今回のテーマは「夫婦の年末年始」だ。
しかし、先に行っておくとあまり年末年始は関係ない話になると思う。

俺はテーマが何であろうとお構いなしに推しや前澤友作の話を始める人間だホイホイついて行かない方がいい。

年末年始、というのは年末前に今年の仕事を終わらせた奴にだけ訪れるのだ、1月1日に12月21日ごろの仕事をしている奴には未来永劫やってこない。

そもそも無職には休日という概念がないので正月休みにも特に思い入れがない。
むしろ1月4日ごろに聞こえる厚生年金どもの断末魔こそが、無職の除夜の鐘であり第九なのだ。

よって年末年始もいつも通り、部屋にこもりソシャゲとYouTubeを見ていた。

最近、YouTubeで、不倫による泥沼離婚、壮絶な嫁いびりの末の家庭崩壊などを扱った動画を見るのにハマっている。
これは「最近のマイブームは違法薬物です」と言っているようなもので、ソウルジェムが真っ黒というより、もはやバフンをソウルジェムと思い込んで大切にしている同情に値する人に状態である。

しかしそれらの動画は、俗世の醜さを見せて解脱を促す宗教法人政策のPVというわけではなく、最終的に邪智暴虐の姑が滅されたりする、水戸黄門と同カテゴリの娯楽として作られている。

実際この手の動画では、子持ちの専業主婦が「実は手に職」や「全面バックアップ両親」など、印籠級のチートアイテムを使って秒で不倫夫に叩きつけるのだが、現実はそう簡単にはいかないだろう。
またこ弁護士というサーヴァントが☆1レベルでカジュアルに召喚されるのだが、実際は弁護士費用などのハードルがあるはずだ。

だが、現実ではそう上手くいかないからこそ人は夢物語を求めるのだ、つまりこれは令和のおとぎ話であり、サレ妻はガラスの靴の代わりに緑の紙をおいて城という名の義実家を去るのである。

よってこのような動画を見ていると、昔プリキュアの憧れたように、と言いたいところだが、我々世代で言うとちゅうかなぱいぱいに憧れたように、俺もこの動画みたいに鬼姑やクソ旦那を成敗してえという気分になってくるのだ。

しかし、現実というのはそう甘くはない。
アマプラを閉じれば、自分は主人公ではなく、デスゲームで最初の見せしめに殺されるおしゃべりモブだと気づくように、自分は成敗される方だと思い出してしまうのである。

ちなみにこのような動画では「年末年始」の話も多い、義実家全員分のおせちを嫁に手作り強要、さらにおさんどんとしてこき使う姑、それをヘラヘラして見ている夫を八つ裂き、と言う話はテンプレでありながら毎回「神回」とされている。
だが、私にはそういう義実家も姑もいないし、どちらかと言うと義実家で飯だけ食って帰る厚かましい嫁の方が近いポジションだ。

つまりどう考えても突然緑の紙を出されて仰天するのはこちら側なのだが、慌てるのはまだ早い。