理由③:感情と言葉の反射神経をよくする

「あーあ、あのときにがんばって伝えていれば……もしかして今ごろは……」と、デートの翌朝にどうしようもない妄想をすることが人生に何度もあった。好きな人ならなおのこと、「勇気を出して言えばよかったこと」が深い雪のように静かに重く、つもっていく。そういうものだと思う。気づいたらもう何を言えばよいか分からなくなっている。

学生のころ、「『好き』とかって、いつ言うのがいいのかな?」と友人に尋ねたことがある。「そんなの迷うことないよ、『好き』だと思った瞬間に言う」と返され、ああ、なるほどな、と思った。ためらえばどんどん言いづらくなるし、実際、「好き」と思った瞬間こそ最も目がハートになっていて、相手にも伝わりやすいだろう。「好きと思う」→「好きと言う」の時差をなるべく少なくすることを心がけている。

余談だけれど、この心がけは恋愛以外でも役に立っている。例えばセクハラを受けたときにすぐ怒るとか、傷ついたときにすぐ悲しいと伝えるとか、そういうことがずいぶんできるようになってきた。恋愛の好意と同様に、怒りや悲しみなどの感情も相手に伝えるのをためらってしまいがちだ。でも実際にはすぐ「それってセクハラ!やめてください」と伝えた方が相手にも分かりやすいし、再発しづらいし、自分自身もスッキリする。あえて言葉にしないことを美徳とする考え方もあるが、思ったことはもっとカジュアルに言ってもいいのだと私は思う。

仕事上の付き合いしかなかった同期の彼とは、最初に「デートしましょう」と誘った記憶がある。仕事の文脈とは明らかに違う、恋愛としてですよ、ということをゆるやかに共有した後は、なるべく思うままに好意を伝え、1ヵ月後にお付き合いをはじめた。冒頭に書いた「実は私も彼のことが好きだった」と打ち明けた友人は、「別れたら譲ってね」と付け加えていたけれど、そんなに悠長なペースの人には負けないよ、と恋愛スピード狂の私は内心ほっとしたのだった。

Text/雨あがりの少女
記事初出:2020.10.14