好きになったらすべてが仕方ない。私は“恋愛スピード狂”/雨あがりの少女

「男好き」っていけないことなの?

by takahiro taguchi

きっと、生まれながらに恋をしていた。母が言うには、まだハイハイもできないころから、腹ばいで気になる男の子をじっと見つめていたらしい。目があえばにっこり笑い、短い腕をせいいっぱい伸ばして、その人の肌にふれようとする。そういう赤ちゃんだったし、ずっとそうやって生きてきた。

「結婚してください」と言ったときにはスミレ組の注目を集め、相手の男の子は混乱して泣いてしまった。「お母さんのほうが好き」とか言われたような。そうだよね……。人生しょっぱなから暴走してフラれたわけだけれど、恋愛の常識なんか知らなかった私には「フラれる=終わり」という認識もなかったし、一度フラれたからといって特に気にすることなく毎日アプローチを続けていたら、やがて彼も私のことを気に入ってくれた。

思春期には好きな子が何人もいたし、いいなと思うとすぐに周りに「あの人かっこいいよね」と言い、本人にもあからさまにすり寄っていくので、よく「男好き」と揶揄された。最初は不思議に思ったが、友人の話を聞くに、たしかに私はひとより恋をしやすい人間らしい。男好きって悪いことなのかな?と悩んだ時期もあったけれど、本当に好きなんだから仕方ないじゃん、と徐々に開き直り、開き直ってしまえば他人から口を出されることもなくなった。

先日、男の子とセックスしたあとに、「これまでの人生で好きになった人の数」の話になって、記憶を辿ってみたら30人くらいだった。そう多いとも思わないが、彼に聞き返すと「俺は3人だけ」と言う。1人目は中学生のときに突然キスをしてきた女の子、2人目は高校で毎日話しかけてきた女の子、3人目は詳しく教えてくれなかったから今好きな人なんだと思う。2人目は私のことだ。

彼とは高校の同級生で、喋ったこともないころから私は彼に恋をしていた。夜な夜な音楽をつくったり楽器の練習をしたりしているようで、授業中はずっと突っ伏して寝ている、そういう気だるさが大人っぽく見え、憧れていた。同じクラスになったとたんに話しかけ、「かっこいいね!」などと話しかける日々。ずっと私の片思いだと思っていたけれど、実は彼も私のことを好きだったと、卒業してかなりの年月が経ってから知ることになる。「あんなに素っ気なかったのに?」と尋ねると「あまりに直球すぎて、どうしたらいいか分からなかった」と言われた。そうか……。かつての恋の答え合わせをするように、何度かセックスをしたのだった。