好きになってしまった…と観念することが恋なのだ

恋愛って、事故みたいだ。当たってしまえば不可逆で、体が引き裂かれるように痛いし、苦しい。全然ステキなんかじゃない。「恋愛を事故に例えるなら、君は当たり屋みたいなもんだよ」と彼に言われて笑ってしまった。たしかに私は恋愛においてはいつもスピード違反だし、道を逆走しているし、臆せず正面から当てにいってしまう人間だ。暗黙のルールなんか律儀に守っていられないし、守っていたら一抹のチャンスを取り逃してしまうような気がする。

だから好きになったらすぐに「好き」と言ってしまうし、かっこいいと思ったらその瞬間に「かっこいい」と声に出してしまっている。恥ずかしい思いもたくさんしてきたし、他人より失敗も多い人生だけれど、そのぶんスピードで勝ち取った恋も多い。たまに「こういう人を好きになってもいいんでしょうか?」などと悩み相談をされることがあるが、好きになる前から悩むなんて面白い! と思ってしまう。その間に私のような恋愛スピード狂が駆け込んでこないといいね。

恋という感情はコントロールがきかない。だから「こういう人を好きになった方がいい」などというアドバイスに私は意味を感じない。世間で言われるようないわゆる「クズ男」にハマったこともあり、めちゃくちゃ浮気されたけど、好きになってしまったのですべてが仕方なかった。むしろ仕方ないと観念することが私にとっての恋なのかもしれないと思う。べつに生活をよくするために人を好きになるわけではないし、ある程度ならそのために生活が堕落してもいい。

「俺は30人の内の1人かよ」と彼が不服そうにしていたので、それはそうだけれど、あなたは特別だった、というようなことを適当に話したと記憶している。でも本当は、30人のすべてが特別だったのだ。だって、特別じゃない恋なんて存在しない。もちろん今思えば首を傾げるような人もいるのだけれど、その瞬間、私にとってその人が最高に輝いていたという事実は永遠に揺らがない。トキメキの一瞬一瞬を逃したくなくて、その輪郭にふれたくて、どうしても欲張りな私は今でも恋愛スピード狂である。

Text/雨あがりの少女
初出:2020.09.02