なぜ、好きな人がいるのに他の男とセックスをするのか
それは、私もマリちゃんも重たい女だからである。持ち合わせている愛はあまりに重たいし、一人の男にぶつけてしまえば、諸共に壊れてしまうだろうからそれだけは避けたい。おまけにプライドも高いから、決して重たいと思われたくはないし。デブほど黒い服を着るのと一緒で、重たいからこそ軽く見せようとしてしまう。
その結果、愛を多方面に分散させて、気を紛らわせるようになって、寂しい夜をスキップする代わりに最低な朝を迎えているんだと思う。そうすることでしか、今は心のバランスを保つことができないから。
なにもない夜よりはなにかあった夜の方が楽しい
でも、昔の私や今日までのマリちゃんみたいな人間は「そんなんじゃ一生幸せになれないよ!」なんて言われなくても分かっているだろうから、無理にやめようとしなくていいと思う。相手がホストだろうがバンドマンだろうがなんだろうが、一人で眠るよりはあたたかさを感じられるのなら。
いや、良くはないんだけど、どうせすぐにはやめられないからね。だって、きっと今はそんなに痛い目に遭っていないし、なにもない夜よりはなにかあった夜の方が、その時その時は楽しいから。
好きでもない男とセックスして迎えた朝のことを“最低な朝”だと散々言ってきたけれど、それはあくまでも結果の話であって、その時その時は楽しんでいるわけであって、だから、週末になるとまた繰り返しちゃうわけであって……。
それでも終わりはやってくるから、今は“なにかある夜”を目一杯楽しんで。最低な朝を迎えた帰り道はあいみょんの『from4階の角部屋』を聴いて。
愛される自信と嫌われる勇気をあなたが手に入れるその日まで。くれぐれも満たされようとしてすり減らないようにね。
Text/妹尾ユウカ
初出:2020.04.08
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