―女性の好きな仕草、キュンとくる仕草はありますか?

ペタルダンス 石川監督 スペシャルインタビュー

石川:しょっちゅうキュンキュンしていますね、特に撮影中、「そういう仕草になるか!」って。
そこに偽りがないというか、装ってないというか、その人の心の中で起きていることが表面上の断片に見えてくるといいですね。

 コマーシャルの演出という仕事をしていて、仕草とか顔の表情、俯き加減とかに意味があるんじゃないかと思って、自分から「こういう仕草で」とお願いしていた時期があったんです。結果的にこうなるんじゃないかな? って勝手に思って。
今思うと、その時の仕草は作られた仕草というか。出来上がったCMを見て、「仕草」ってそういうものじゃない、と思うようになりました。
普段人と接しているときに、無防備に、自然に出てしまった仕草とか、全く別のことを思っていたり、考えたり、感じていたものが、端の方で仕草として現れてくるといいなあ、と今は思います。

―無理して作るというよりも、思っていたことがそのまま出てしまう感じですか?

石川:本人が気付いてないくらい、何かに没頭したり、誰かを想っていたり…。
人って同時にいろんなことを思えるし、感じとれるし、その場にいてもその場のことだけを考えているわけではないので。
誰にも見られていないと思っていて無防備に出てしまった仕草にはとてもキュンとします。
そういう無防備な状態で傍にいるということは、自分に対して何かを感じてくれているのかな、と。もしかしてそれは信頼? とか勝手に思ってしまいます。

 女の人は、恋愛関係にある人以外にもそういう瞬間を見せる時がありますよね。
男は他人がいるときは気を張っているので、なかなかそうならない。自分にはない感覚だからこそ惹かれるのでしょうか。

―「スキがある人」っていますよね。

石川:僕、スキのある人が好きで(笑)。極まれにしかいないのですが、スキだらけなのに自分でそのスキを認識してない人が好きなんです。
一緒にいてその人の気持ちがどこにあるんだろう、本当に思っていることや考えていることがどこにあるんだろうと思わせる。おそらく他所にあるからスキがあると思うんです。
スキのある人は、明るさに深さがある気がしてかわいいですよね。

 今回の映画で一番初めに思ったのが、「明るさを深める」ということ。
人が誰かと会って、明るくあろうとする姿って、素敵だなって。苦しみとかを抱えていても、そばにいる人のために明るくあろうとする姿はいいなと。特に日本人のいいところでもあるなって思っていて。
とはいえ、ただ明るいじゃなくて、裏に何かがあるからこそ明るくあろうとする…そういう人たちの話にしようと思いました。
僕が女の人に感じているところでもあるかもしれないですね。人と話している時に、男の人よりも先天的に明るくあろうとするじゃないですか。
明らかに女の人のほうができてるな! って。なんだこの違いはって。

 男の人は頭で考えすぎちゃってうまくいかないことが多いんですよ(笑)。
人に対しての気遣いなんかも履き違えてしまったり…何もつかんでなかったりしますよね。
上っ面、上滑りしてるというか…とってつけたような明るさはバレてしまうという経験が、僕自身どこかであったのかもしれないですね。

 男のそういうどうしようもない、女の人に敵わない部分に興味があって、僕の映画に出てくる男は、女の人に引け目みたいなものを感じているところがある。
それは僕が普段から感じていることだからかもしれませんね。

Text/AM編集部

プロフィール

ペタルダンス 石川監督 スペシャルインタビューd
石川寛監督

1963年5月18日秋田に生まれる。東京、仙台、秋田の大館、3つの街で育つ。
明治大学中退後、1990年にCM制作会社TYOに入社。
以来CMディレクターとして多くのコマーシャルを手がける。
中でも「資生堂マシェリ」「GOAください」などの女の子の日常を切り取ったCMで注目を集める。
2000年にTYOを退社し、独立。2002年『tokyo.sora』で映画監督としてデビュー。
都会に生きる6人の女性のリアルな姿を描いたこの作品は、第56回ロカルノ国際映画祭と2003年ウィーン国際映画祭に正式招待される。
監督2作目の『好きだ、』(06)では脚本・撮影・編集も手がけ、宮﨑あおい、西島秀俊、永作博美、瑛太を迎えて、17年間におよぶ純粋な愛のゆくえを詩情豊かに描いた。
2005年ニュー・モントリオール国際映画祭で、審査委員長のクロード・ルルーシュが「素晴らしい才能を発見した」と絶賛し、最優秀監督賞を受賞。
本作は『好きだ、』以来7年ぶりの新作となる。