『夢』が終わって『現実』が始まるが……
女に翻弄され続けるボビーとその叔父のフィル。それを演じるのが『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグと、『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレルという、童貞キャラを演じさせたら右に出るものがいない同士で肩を並べているキャスティングが面白い。
この二人の掛け合いが見事で、世代を越えた恋煩いが黄金期のハリウッドを忘れさせる。そんな前半戦は、名付けるなら『夢』。誰もが思い描くサクセスストーリーをボビーは胸に抱いていた。
しかし、ヴェロニカとの恋が破れた後半戦は『現実』。夢見ていた世界に裏切られた彼が新たな社交場を作り、幻想を追いかけることなく新たな女性と巡り合う。
ボビーは精神的に大人になる。そこで恋がいかにファンタジックで、現実からかけ離れていることに気が付く。だが、夢は永遠に醒めることはない。運命のいたずらなのか、彼が再びその『夢』のヒロインと再会を果たす。その名もヴェロニカ。夢を忘れさせてはくれないのだ。
そこで彼・彼女はどう思うのか。
恋の前では上流階級社会であろうともどこの世界でも同じで、その威力に大差はない。
ボビー、フィル、2人のヴェロニカの3つの恋の絡み合いが、「あぁ、結局、私たちと同じなんだ」と少しばかり元気を与えてくれる。
どんなに小さな世界の恋愛でも、好きな人は“世界一”でしかない。そこにヒロインさえいれば、そこを上流階級にも自分をセレブにも変えてくれる。
ストーリー
華やかな映画の都に憧れて、ニューヨークから平凡な青年・ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)がやって来る。
業界の敏腕エージェントの叔父・フィル(スティーヴ・カレル)のもとで働き始めたボビーは、フィルの秘書・ヴェロニカ(クリステン・スチュワート)の美しさに心を奪われる。
あるきっかけでヴェロニカと親密になったボビーは、彼女との結婚生活を夢見る。だが、彼女にすでに恋人がいることを知ってしまう。
やがてボビーは新たにもう一人のヴェロニカ(ブレイク・ライヴリー)と出会うことになる――。
5月5日(金)、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
監督・脚本:ウディ・アレン
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリー、スティーヴ・カレル、パーカー・ポージー
配給:ロングライド
原題:Cafe Society/2016年/アメリカ映画/96分
URL:『カフェ・ソサエティ』公式サイト
次回は <母子の新しい愛情表現を描く傑作!子の幸せを願う女性たちの優しい視点が最高だ『20センチュリー・ウーマン 』>です。
1979年、時代の転換期。シングルマザーのドロシアは、15歳の息子・ジェイミーが混沌とした時代を生き抜くために、自由奔放な写真家アビーとジェイミーの幼馴染・ジュリーに教育を託した——『人生はビギナーズ!』のマイク・ミルズ監督の半自伝的作品。
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