恋の駆け引きとかそんなレベルじゃない。誰かを愛する時、人はかくも他人を欺き、その愛を得るために自らを偽るものか。
この作品には3回騙される。それも裏の裏、またその裏をかいてくる。メイド、お嬢様、詐欺師。三人が散りばめた“嘘”のパズルが火を上げながら摩擦し合い、それらが整って真実に導く時、あまりの衝撃の結末に息を呑む。
成人指定にも関わらず韓国では大ヒットとなり、カンヌ国際映画祭でも絶賛の嵐が吹き荒れた。
『イノセント・ガーデン』でハリウッド進出を果たした韓国の鬼才パク・チャヌク。彼が7年ぶりに韓国で手がけた最新作に、キム・ミニ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、ムン・ソリなど実力派はもちろんのこと、オーディションで1500分の1の競争率を勝ち抜いて主演に選ばれたキム・テリが華を添えている。
“スキャンダル”が三部構成によって多角度で描かれる
本作は三部構成からなり、第一部はメイド・スッキの視点、第二部はスッキが仕うお嬢様・秀子の視点で描かれ、詐欺師・藤原伯爵の作戦とともに数々の謎を残して、第三部はすべての真相が明るみになる。
各キャラクターの不可解な行動もすべて伏線として回収され、官能シーンのみならず作品自体の構成が見惚れるほど美しい。
舞台は1939年、日本統治下にあった朝鮮半島で膨大な蔵書に囲まれて暮らす大富豪の屋敷。そこでスッキと藤原伯爵が財産を奪おうとする。和式と洋式がミックスした部屋と、日本語と韓国語が交互に繰り出される会話。あらゆる文化が融合した様はカルト映画的な深みがあり、その上で写真のように切り取られる映像の構図がスタイリッシュに作品を彩る。
そして、韓国人俳優によるたどたどしい日本語のセリフを凌ぐ、体を張った芝居が大きな見所だ。特にスッキが秀子をお風呂に入れるシーン。秀子の指をくわえたスッキと、それを見つめる秀子の緩やかな目の動きがエロティックで、官能的な肉体の絡みもすべて二人の心理描写として消化されている。
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