援交は誰が被害者?
その授業でディスカッションがあったのだけど、ある女の子の意見で場が凍った。「非行は誰かを傷つけたり欺いたりすることで被害を受ける人がいるからダメだって分かるけど、援交って誰にも迷惑かけてないじゃん。おっさんは若い女の子とヤレてハッピーだし女の子はお金もらえてハッピー。援交って別に非行じゃなくない?」
多分その子もそういう経験があったんだと思う。となると作文や個々の課題などで自分の非行について振り返る時間があるはずだ。援交の経験がある子には援交について考える課題が与えられる。でも自分が悪いことをしたという自覚がなければ反省することも出来ないし、ただ作文用紙を配られて反省すべき点を書けと言われても腑に落ちないだろう。
その女の子に対する先生の返答がこちら。
「被害者がいないと思ってるのは自分だけ。それを知った親はきっと悲しんだと思う。だから親も被害者」
私は開いた口が塞がらなかった。同時にイライラとかやるせなさみたいなものが込み上げてきて、誰かこの教官を少年院からつまみ出せという気持ちになった。売春する子は自尊心がとても低い。それに加えて少年院に来る子どもに親との関係が良好な人などまず100%いない。家族との関係性や理不尽な虐待などが原因で自尊心が低くなっている可能性も少なからずあるはずだし、売春をしている子は「強いて言うなら自分が被害者だろ」という意識があったりする。そう思っている子に「自分は加害者で親が被害者」と言ってしまうのは酷だし更生には繋がらない。「更生には自分を大切にする気持ちが必要、自分の体は宝物なんだから」と言ってくれる大人がいたら彼女たちは少し変われてたのかなと思う。
すり減るのは紛れもなく
社会に出てから私は同じ少年院で生活していた女の子とたまに会ったりする。少年院の中では彼女たちと自由に話すことが出来なかったので、社会に出てきてから彼女たちの非行内容について知った。近況を聞いてみるとやっぱり売春まがいのことをして稼いでいたり、18歳を過ぎている子だと風俗などの水商売に勤めている子が圧倒的に多かった。
そんなことやめなよ、と私が言うとみんな口を揃えて「減るもんじゃないし」とか「わたし身体は売っても心は売らないの」なんてかっこつけて言ったりする。でも私が「いま幸せ?」と聞くと「そんなわけないじゃん、いつも死にたい」って答えが返ってくる。
どんなに強がっても、身体を売る生活に嫌気が差して死にたいと思ってしまうことで何かがすり減っているのだとしたら、それは紛れもなく彼女たち自身の心なんじゃないかなと感じた。売春も一種の自傷行為だと思うし自傷は必ずエスカレートするので、それを止めるには自分のことを愛してあげるしかないのかな。
Text/戦慄かなの
次回は <モテる美人は不幸な恋愛をしがち?欲望が満たされることはないのだろうか/戦慄かなの>です。
大好評、戦慄かなのさんの連載二回目です!あなたの周りにも「美人なのにいつも恋愛で傷ついている女性」はいませんか?どうして恋愛市場においてアドバンテージを持っているはずなのに幸せな恋愛が出来ない美女がいるのか、独自の視点で語っていただきます。
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