女としての自分の価値を感じたい、という欲求
高校2年で初めての彼氏ができ、今に至るまで一度も男は途切れていない。新しい男ができる状態で彼氏とは別れ、二股や浮気も当たり前にやってきた。でもそんな奔放の始まりは、“女としての機能を確かめたかったから”という切ない思いだった。
「初めての彼氏とのセックスがなかなかうまくいかなくて、自分の女としての機能に何か欠陥があるんじゃないかとすごい悩んでた」
そんな悩みにより、初めて彼氏以外の男と最後まですることに成功する。
「初めて最後までできたときは、“私も生きてていいんじゃん!!”って世界が変わった気がした。“私も女なんだ!!”って初めて胸を張れたんです。あの一晩で、ものすごい変われた」
男に抱かれることで満たされる、ではない。自分は男に抱いてもらえる女なんだ、という安心感で満たされる。この2つは、似ているようで全然違う。
自分を求めてくれる男の存在は、分かりやすい自分の価値のバロメーターだ。そうしてさやこは、風俗嬢として働くところに行き着く。大学時代ホテヘル嬢としてアルバイトを始めた。
「自分が“商品として売り物になるのか“が純粋に知りたかったんです。女としての自分の価値が知りたかった。実際働いてみたら、ちゃんと値段がついてお客さんにも喜ばれて、いいことしかなかったですね」
風俗嬢として働くことで、女としての自分の市場価値を知りたいと思ったさやこ。情で包まれた家族や友人からの「かわいい」じゃ本当の価値は分からない。ちゃんと女としての価値を知り、そこからちゃんと生きていきたかったのだ。そこでさやこは、自分の立ち位置を知った。
「客観的に見たらやっぱり、自分がモテる容姿だとは思いません。でもだからこそ、モテるように頑張り続けてきた私は、十分に愛してもらえる価値があるって信じられるようになりました」
風俗嬢としていろんな男性に会い、そこで働く女性たちにも会い、さやこは見違えて強くなったと言う。目の前のさやこは、弱みも強みもしっかり受け止め自信に溢れている。よくまあそこまでいけたものだと感嘆したら、「でもこうなれた最終的なきっかけは男じゃないですけどね」と慌てて訂正した。そして、
「全部変えてくれたのは、メイクなんですよ!」
と、叫んだ。文字通り叫び、そして、「そらみさん、メイクって本当にすごいんですよぉ」と酔っ払いの声で繰り返しながらも、目の奥に涙を浮かべていた。