今この瞬間を大切にしすぎない
初めて付き合った人と初めてセックスをしたものの、まったく気持ちいいと思えなかった。セックスはとっても大切なもので、たいそう気持ちがよくて、特に好きな人とのセックスはどうやらマジで最高らしい…という世間から漏れ伝わってくる情報とはあまりにかけ離れた想定外の出来事に悩み疲れ、とうとう見ず知らずのヨボついたアラサーに相談するまで思い詰めてしまった、きなこさん、21歳。
先ほど私はこの相談を見て悲しくなったと書きましたが、それはきなこさんに共感したからではありません。若さゆえ、未来が果てなく広がっているがゆえの閉塞感、焦燥感を想像すると可哀想で、痛々しくて、悲しくなってしまったのです。
知り合いやフォロワーの若い女の子たちに私が伝えたい(けれどウザがられると思って伝えられていない)ことは、どうか自分の置かれている状況を、良くも悪くも特殊なものだと思わないでほしいということです。
いいですか。
セックスに関心を持たない人は所謂“Aセクシャル”という呼称で注目されるほど、世の中に沢山います。性欲が人並みにあったとしても、どんなにイイ人で気も合って何なら好意だって抱いていたとしても、なぜかまったく欲情できない男性も山ほどいます。大好きな相手との楽しいはずのセックスが驚くほど気持ちよくないことも、イヤになるほど経験します。私みたいにくだらない理由で性欲が減退したり爆発したりを繰り返すことも、掃いて捨てるほど起こります。
さらに言うと、しばしばスポーツに例えられるセックスですが、ひとりで爽快感を得られたり、スコア更新を狙えたりするような単独競技とは大きく異なります。性交渉は通常2名(以上)で行うものですから、つまりはチーム戦。お互いがその時たまたま持ち合わせたモチベーション、コンディション、ポテンシャル、志向や癖や相性や、そういった諸条件が合致してやっと、お互いが快感と充足感を得ることができる、実は相当繊細な行為なのです。だから、たとえ好き合っている相手であっても、失敗に終わることだって大いにありえます。
きなこさんが恋人とセックスしても気持ちよくない原因は、きなこさんが悩まれている以上にたくさん考えられます。けれどその原因がどれであったとしても、異常なことでは決してないのです。
恋愛やセックスの相手も同様で、言ってしまえば、今お付き合いしているその男性が唯一無二の運命の人だなんてことはほとんどないのです。きなこさんが懸念されるように、今後これ以上のパートナーが現れないなんてことは、まずありえません。それは寂しいことですし、残酷でもありますが、だからこそきなこさんは悲観する必要がないのです。今の彼と同じくらいかそれ以上に心ときめく素敵な出会いは、たくさんあります。大丈夫です。
とはいえアラサーにもなると、今手元にあるカードを切るか、もう一巡いい出会いを待ってみるかという選択が人生における“勝敗”の分岐点になってしまう場合もあると言われます。でも私自身は実はそれすらも懐疑的です。
“若いうちが華”“女性の商品価値は○歳まで”などの言説はまことしやかに広く浸透し、また多くの女性を縛り付けていますが、そんなわけねえんだよ。なめんなよ。
いくつ年を重ねたとしても、自身が女性であると自認し、誰かに惹かれる心情が消え去らない限り、女性は女性として十分に魅力的たりうるし、相手なんて無尽蔵に湧いて出ます。私はそう思います。
ましてやきなこさんはまだ、花も恥じらう21歳。若すぎるきらいすらある、麗しい年齢です。若さは貴重で有限なことは事実です。けれど、どうか今この瞬間を必要以上に重く捉えないでください。女性としての人生はイヤになるほど長く続きます。しかも男なんてそれこそ、地球上に35億人もいるのです。