諦めたって楽になれるわけじゃない
軽快にまいるどころではありませんでした。ちょっとなんなの…メチャクチャ重い。
特に最後の1文がシビレますね。
『どうしたら海坂さんのように全てを諦められますか』
エッ。
どうしたら…? どうしたらいいんでしょうね…? ていうか逆にどうしたらこんな若い盛りの女の子が全てを諦めたくなる境地に達してしまうんですか?
失恋しまくり負けまくり泣きまくり、まさに“不幸のプロ”を自認する私は確かに、恋愛の成功ノウハウやテクニックをお教えすることはできませんと初回に書かせていただきました。
でも残念ながら、全てを諦めるためのノウハウやテクニックだって、お答えすることはできません。
だって、諦めるということは実際のところ、悩みから解放されるラクな道では決してないからです。
たとえ諦めたつもりでも、好きな人と一緒にいたい気持ちはそう簡単にはなくなりません。愛したいし、愛されたい。ケンカしたら傷つくし、フラれたら立ち直れないほど落ち込みます。それが人間の自然な営みに他ならないからです。
その上、絶えず不安が付きまといます。これで本当によかったのかな。ずっと寂しいままで生きていくことができるかな。周りの人々の幸せを、自分が愛した男の幸せを、心から祝ってあげられるのかな。
結局、人と関わりたい、人を愛したいという気持ちが丸ごと消え去ってしまわない限り、悟りを開いたかのような穏やかな気持ちでいられることはないのです。
りりさんはそれでもなお、「全てを諦めてしまいたい」と思いますか?
私は確かに「幸せにならなくていい」「結婚も諦めた」と言っています。
それは紛うことのない本心です。家族にも顔向けできないけれど私は人並みに結婚ができるような人間では到底ないし、愛する人とともに幸せに向かって歩んでいけるビジョンだって、これっぽっちも持てません。だから確かに、“諦めた”ことになるでしょう。
もしかすると、私の考え方がりりさんには、潔いように見えてしまうのかもしれません。だとしたら申し訳ないことです。だって私は人並みの幸せを、諦めたくて諦めたわけではないからです。諦めるしかないから、諦めたのです。
幸せになるためには悩んだり失敗を乗り越えたりしなければならない。つまり努力しなければなりません。ですが私にはそれが、みんなが頑張れるはずの努力が、どうしたってできませんでした。
そこである人に言われた言葉が、スッと腑に落ちたのです。
「将来を見据えた恋愛や結婚を本当に幸福だと思うのなら、叶える努力をしてるはずだよ。努力できないのは侑ちゃんが怠惰だとかダメだからじゃなく、本当は望んでいないからだよ。幸福だと思うことに人は、努力できるんだよ」
私にとって、愛する人とともに歩む未来がなぜ“幸福”でないのかは正直なところ、分かりません。でもずっと幸せになれないまま、追い求めることすら苦痛な「幸福」のために苦しむくらいならもう、諦めるしかないと思いました。ただその代わり自分で努力できることについては、未来や採算なんて見えなくても、たとえどんなにキツくても、真摯に向き合うしかないと腹を決めました。
幸せを追い求めることも、諦めることも結局おんなじ。
言い換えるとつまり「覚悟を決める」ことなのです。
りりさんはまだお若くて、恋愛経験もいくつか重ねられる程度には女性として魅力的であることが伺えます。周囲の友人や自分を振り回す好きな人にまで、心配りできる優しさも持ち合わせています。
どうか焦って早々と覚悟を決めてしまおうとしないでください。そして、私のような者を見本にしようとしないでください。りりさんよりちょっと年食ってしまっただけの、情けないお姉さんからのお願いです。