苦しみの優先順位をつけよう

もともとAM編集部さんからいただいた依頼では「なるべく性的でないテーマで連載してください」と念を押されていたにも関わらず、初回からセックスの話が来ました。どういうことだよ。

それはさて置き、ミアさん、とても悲しい気持ちが伝わります。いろんな不安が胸をよぎるけれど、優しさゆえに本音を彼にぶちまけることもできない。私にはない奥ゆかしさを持った、慈愛深い女性なのだろうと思います。

しかし私がウーンと首をひねるのは、ミアさん自身がこのつらさの原因と感じられていることが何なのか、ミアさん自身がどうしたいのかが整理されていない点です。

苦しみと向き合う(解決するではない)プロを自負している私がオススメする対処法は、まず分析すること。アーンなんかコレつらい…と漠然と大きな悲しみに囚われたときは“いったい何がどうだから悲しいのか”を解明するのがまず一歩です。

ミアさんの場合、最大の問題は言わずもがな「彼氏とセックスレス状態であること」です。けれども、その理由をさまざま推測されている様子からも分かるように、複数の不安を一緒くたにして悩まれている印象を受けます。

・自分の身体に自信が持てない
・浮気されているかもしれないという疑い
・彼の本心が分からない
・結婚適齢期の今、彼との将来が不明確

ざっと挙げてみましたが少なくとも、ミアさんの悩みにはこれらの不安が内包されているように読み取れます。不安要素をひとつずつ並べると、どれがイチバンつらくて、どれを解消すると少しはラクになれるのかが考えられるようになります。
優先順位がつきさえすれば次に取るべきアクションや、自分が望む方向への見通しが立ちます。

ミアさんは何よりも自分の女性的魅力の薄さに不安を抱いており、セックスレスの大きな原因と認識しているようです。でも身体コンプレックスなんて正直、適当な男性に連絡を取って適当な夜をひと晩過ごせば解消する不安だとは思いませんか。自分の不安がまったくの杞憂で、十分な女性的魅力が自分にもあるということがわかるはずです。

だけどおそらく貞淑なミアさんは“そんな不道徳をはたらいてまで自分の魅力を確かめなくていい”と思われるのではないでしょうか。だとすると、分かりやすい身体コンプレックスという問題を盾にして見て見ぬフリをしているもっと重要な不安が他にあるのではないか? という推察も、できるようになるわけです。

ちなみに私の場合は、相手の動向や意図が見えないことに何よりもストレスを感じます。もし私がミアさんの立場だったら、セックスしてくれない理由を納得いくまで問い詰めるし、、浮気の有無を地の果てまで追いかけてでも明らかにしてしまうでしょう。

もちろん、それでは幸せな展開はあまり望めません。それどころか自分自身は深く傷つき、大切にしてきた二人のこれまでの日々が台無しになる可能性もあります。経験上、実際ほとんどそうでした。
それでも私がそうせざるを得ないのは、自分の中に蓄積する疑念を明らかにして知的好奇心を満たすことこそ、私にとって何よりの安心だからです。
“幸せな未来”を追いかけないことで得られる心の安寧も、時にはあるのです。

私は相手に不安を抱いたまま一緒にい続けるよりも、たとえひとりぼっちになったとしても物事の真相を知る方が納得感を得られて穏やかでいられるのです。

だからまずは、自分が抱える苦しみの優先順位を考えてみることをおすすめします。

ミアさんが考えて考えて悩みぬいた末に、彼と一緒にいるために努力や我慢をすると決めたのなら、それもまた素晴らしいことです。自分の覚悟を決めることでさまざまな選択がしやすくなると思います。