女の子をナンパし、飲んで恋バナを聞かせてもらうこの企画。
高円寺駅前の少ない人通りもなんのその、一発目ですんなり快諾してくれたのが、カラコンばっちりの派手め美少女・さおりちゃんでした。
さおりちゃんを道連れに1時間かけて高円寺をナンパしてまわり、葛藤と酒に溺れるバンド女子みんみんに出会い、とうとう初めましての面々でお酒を飲みだしたのです。
さおりちゃん、22歳大学3年生の場合
飲みだしたものの、こんなリア充臭を全身から醸し出す子がぶっちゃけてくれるかしら、とチラチラ様子を伺ってしまう。両手でお酒を飲む様子は優雅でさえあるし、なによりカラコンと濃い目の化粧で、表情が読みとりにくい!
「みんな見た目にひきずられるんですけど、普通にめっちゃひきこもりですよ」
高円寺で出会ったさおりちゃんは、パソコンをこよなく愛する、オタク姫だった。
「高校は美少女系のアニメをずっと見てて、完全なるオタクでしたし。てか今もひきこもりで、ずっとゲームしてます。夏休みは、ゲームしてバイトしてゲームして寝る、みたいな」
なるほど、と少し膝を打つ。声色はころころ変わるのに表情があまり動かないのは、メイクやカラコンの効果だけでなく、オタク特有のものもあるようだ。
「最近高いパソコンを買ったら、タブが無限に同時で開けるんですよーー!」と興奮するさおりちゃんに、今までの恋愛を聞いてみた。
オタクを純粋培養し、女としての自信もつけた、“高専”という楽園
にしてもだ、とにかく見た目に隙が全くない。スタイルも、服装も、顔も、髪型も、女度がとにかく高い。引きこもりでゲームに精を出し続けてきた少女が、なぜここまでの女度を手に入れたのだろうか。秘密は、“高専”にあった。
「男子50人のところ女子4人みたいな比率だから、どんな子でも彼氏できるんですよ。高1女子は先輩と付き合うのが常識でした。先輩たちも基本、童貞なんですけどね」
高専とは、高校と専門学校が合体したような5年制の学校である。中学時代勉強ができたさおりちゃんは、地域で最も偏差値が高かった高専に進学し、家を出て寮に入った。男に囲まれる生活の中、1年の夏から当時4年の先輩(童貞)と2年ほど付き合ったという。
「デートは基本ドライブで、寮だから親の制約もなく、ご飯食べてラブホテルに行って帰るみたいな感じだった気がする」
公衆トイレでやろうとしてホームレスに怒られた、というみんみんの話を聞いたあとだから余計に、さおりちゃんの話が光って聞こえる。高校1年生から車デートとは! ラブホテルとは! この子は、大事にされてきた子だ。
「その次に付き合った人は、噛み癖があって全身噛んでくるから、寮のお風呂に入る時はあざを隠すのが大変だったんですよ」
キレイなポーカーフェイスで黒歴史のように語られても、悲惨なエピソードには聞こえてこない。どちらかと言うと、過去のノロケを聞いているかのような気分になってしまう。
「モテてきたんだねえ」と投げかけると、「そうですかねえ」と返ってきた。「そんなことないですよ!」と返さないところが、さおりちゃんのモテ人生をあらわしている。
ただ、「モテ人生」という言葉で片付けられそうな気配を感じたのか、さおりちゃんは少し不満げな声色で言った。
「いやでも、私だってダメな恋愛もしてきましたから! 大学に編入してから付き合ったギタリストは、私が食費出したりしてましたから!」
聞くと、同じ大学のバンドマンはあまりにもお金が無かったため、たまに奢ってあげていたという。なんでそんなにお金が無かったの? と問うとこう返ってきた。
「私の家と遠いからって近くに引っ越してきたんですよ。実家から通えるのにわざわざ1人暮らししたから、仕送りしてもらえてなくて。バンドでお金もかかるし」
え! あなたと居たくて、わざわざ家を出て、自分で家賃や生活費を工面していたと!? 愛されてるじゃないかーーーい! しかも、さおりちゃんの家に転がり込むではなくちゃんと家借りるとか、いい男じゃないかーーーい!!!
「その人、私と別れてから売れだして、某有名フェスに出てたりもして」
アゲマンじゃないかーーーーい!
「そのバンドマンとかぶる形で付き合いだしたのが、今の彼氏です」
マジでさおりちゃんは、ひっきりなしで男にモテてきたようだ。
いや、言いかえると、ひっきりなしに男に大事にされてきたようだ。
ちゃんと、男に大事にされてきた人の言葉は、すがすがしい。
もちろん一概には言えないが、オタクや頭の良い女子は、現実社会の恋愛にうまく移行できないことが多い。プライドが高すぎて男の肩に頭を乗せるのが下手だったり、劣等感が強すぎて男勝りな自分を作ってしまったりする。
さおりちゃんも同様にオタクだし、勉強もとてもできた。でも、お姫様扱いされる気持ちよさを知り、その後もどんどん愛してくれる男たちと付き合えた高専という楽園が、ちゃんと女の子になれるタイミングを作ってくれたのだと思う。
プライドを保ちながらはじまる恋愛は、いつしかプライドの捨て方も教えてくれただろう。劣等感も、隣に男が居続けるという事実で、消えていっただろう。
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