わたしは「つまんない女」なんかじゃない。エロの世界に飛び込んだころの彼の言葉

保守的な「いい女」を求めてこない彼

サングラスを胸元に引っ掛けている金髪の女性が赤と緑の光に照らされている画像 Daniel Monteiro

 以前、大学時代にSMショーのモデルとして初めて人前で脱いだときのことを書きました。キャバクラで効率よくバイトして、オジサンたちに贅沢なご飯をおごってもらい、週末は合コンに勤しむ。そんな、東京では掃いて捨てるほどいるフツーの女子大生であったわたしが、そのフツーから一歩踏み出すきっかけとなる出来事です。

 その当時、付き合っていた男性は5つほど年上の人でした。その彼の性格をひとことでいうとキチガ……いや、どこまでも自分を特別だと思っている人でした。自己評価が異常に高く、けれども、その自分の“特別さ”を周囲がわかってくれないことに苛立っていました。世の中に飼いならされる器用さがあることを、誇りに思っているような態度を取りながらも、心の奥底には不満をくすぶらせていて、そのせいか酒癖が非常に悪かった。

 こう書くと、どこにでもよくいる承認欲求強いBOYなのですが、そんな彼に夢中になったのは、それまで付き合った男性とは、わたしに求めてくるものがまるで違っていたからだと思います。

 わたしが少女時代を過ごした、23区の一番端に位置する練馬区は、都内といえども、まだまだヤンキーがしぶとく生息している地域でした。そんなヤンキーたちの価値観では、可愛らしく色っぽく、たとえ気が強くても、なんだかんだと自分を立ててくれ、母親のように面倒見がいい女性が「いい女」とされていました。そして、その埼玉との境界の街で育ったわたしもまた、特に何も考えることなく、そういう「いい女」であることが、いいことなのだと、なんの疑いもなく考えていました。

 けれども、そうはなれない自分がいた。当時のわたしは付き合ったことのある男性に「お前が男だったら、ボコってるわ。女でよかったな」と言われ、その彼が絶対にわたしのことを殴れないことに確信を持ちながらも「女だからボコれないってショボイ」と笑って返す可愛げのない女でした。だから、保守的な女性を求めないその彼は、とても新鮮だったのです。