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  • 2017.06.24

「自分の機嫌と関係なく楽しくしよう」と思えない人なんて一緒にいる価値がない

家にはいないけれど、家族の頂点にいた父。その父に言いなりの母。自分の好きなことを両親にさせてもらえなかったわたし。そして弟、妹。“機嫌のいい人”がいない家で育った大泉りかさんは、大人になってから付き合った恋人がいつも不機嫌であることもふしぎに思いませんでした。そんな大泉さんの現在の夫婦生活とは?

“機嫌のいい人”がいない家

不機嫌そうに座っている帽子をかぶった男性のサムネイル画像
by Clem Onojeghuo

 思えば、わたしが育った家は、“機嫌のいい人”がいない家でした。週刊誌の記者をしていた父は、基本的にあまり家にはいませんでしたが、母はそんな常時不在の父を家庭の頂点に置いてもいました。だから、わたしが何か「やってみたいこと」があって希望を言うと、必ず「お父さんに聞いてみる」と自分での決断は避けて、いったん保留にするのが常でした。

 父にどんな教育方針があったのかはわかりませんが、どうやらわたしが興味がある方向は、歓迎できないことばかりだったようで、却下されることが多かったように思えます……いや。もしかして、快く許可されたことはすっかり忘れてしまい、却下されたことばかりが、恨みがましく心に残っているのかもしれません。
けれども、市のコミュニティセンターで開かれた漫画の描き方教室(なんと特別講師に高河ゆんが招かれていた!)への参加を「オタクになったらどうする」という理由で否認され、友達に近所の自衛隊基地で年に一度開かれる観閲式に誘われた時も「過激派が爆弾を仕掛けてくる可能性がある」と行かせてもらえず……子供心に「理不尽だなぁ」と感じたことははっきりと記憶にあります。もちろん父親に食い下がったものの、母親はいかなる時でも父親の味方なので、大人2対子供1。当然叶うわけもありません。

 わたしの行動に制限を掛ける父と、その言いなりの母。なので、自分の興味の在り処がはっきりとしてきて、かつ、好きに使えるお金を稼ぐことの出来なかった、小学校高学年から中学生までのわたしは、たいてい不機嫌でした。おまけに、2歳年下の弟は、赤ちゃんの頃からあまり笑わないタイプだった上に、成長を遂げるに従って無口に。上のふたりがムスッとしているせいで、一番下の妹も委縮してしまい、子供三人がそういう感じだったため、天然キャラだった母さえも、なんとなく空気を読んだ結果、我が家には“機嫌のいい人”がいなくなってしまったのです。

不機嫌な恋人とご機嫌なわたし

 こういう家庭の有様は、後の恋愛にも少なからず影響を与えるようです。家庭とはそういうものだと思っていたので、大人になって恋人になった相手が始終不機嫌なことにも、さして疑問に感じず、そういうものだと受け入れていました。一方で大人になったわたしは、自分で金を稼ぎ、その金で自分の行きたいところに行くことが出来て、したいことが出来ることに、始終ご機嫌でした。そう、いくら機嫌が悪くとも、その根本の原因が解消さえすれば、機嫌は直るのです。

 そうはいっても、正直なところ、恋人付き合いしている男性がいつも不機嫌なことは、憂鬱でした。機嫌を直してもらいたくて、食事を作ったり一緒の趣味を楽しんだりと、それなりの努力はしたものの、彼の不機嫌が根本から解決することはありませんでした。当たり前です。彼の不機嫌の根本は「好きでもない仕事をしていて、身体がつらい」というところにあったので、転職を成功させるか、彼自身が折り合いをつけるしか、直す方法なんてないのです。

 常に不機嫌であると、周囲だけでもなく、本人も困ることがあります。それは、いつもとは別の理由で特別に怒っていてもわかりにくいということです。うっかり不用意な発言をしたとか、行動がお気に召さなかったとかで、わたしに対して、ムッと腹を立てても、こちらからするとまるでいつも通りの不機嫌様なので、気が付くわけもない。「不機嫌な人」というレッテルを張られることで、本当の怒りが目に見えにくくなってしまう。
「いつものこと」として、さして気に掛けることもなく、気が付かないわたしに彼はますますイライラを募らせる。まさに「私がなんで怒ってるかわかる?」です。けれど、クイズを出したところで「いやらしく疑問形にせずにダイレクトに言えばいいじゃん!」とわたしがぎゃーぎゃと騒ぐことがわかっていたのか、彼は断定系で言いました。「俺、実はずっと怒っているんだよね」と。

「えっ、なんで?」と青天の霹靂とばかりに聞き返すと、そのきょとんとした態度に、彼はさらに機嫌を損ねたようでした。そうして「なんでも仕事っていえば許されると思っているのか」「飲み会も仕事、男ときゃーきゃーと楽しそうにするのも仕事、お前にとって仕事ってなんだんだ」「仕事だからって朝帰りってなんなんだ」などのダメ出しをダダダダダッとされました。
ようするに、ただでさえ不機嫌な彼を、その時にますます不機嫌にしていた怒りの原因は、わたしの興味が彼以外に向いていたことです。けれども、その彼の希望を叶えようとすると、今度はわたしの機嫌が悪くなることはわかっています。彼の気持ちもわかるけど、優先すべきは、自分が機嫌よくいること――だと今ではわかるのです。当時は話し合いで解決できると考えて、その結果、別れ際はドロドロになってしまいましたが。

いつも機嫌の悪い男なんて捨てちまいな!

 どちらにしてもいま思うのは、いつも機嫌が悪い人と一緒にいても、面白くないし苦しいし、こっちまでイライラするということです。反対に機嫌がいい人と生活をしていると、少ししんどくて機嫌が悪くなりそうになっても、つられて明るくなれます。「機嫌の悪い人」が「機嫌のいい人」に変わることも、不可能ではないけれど、よほどの根本的解決が必要で、「いつか」という希望を持って待つのは時間の無駄、人はそう簡単には変われません。なので、いつも機嫌の悪い男なんて捨てちまいな!とわたしは思っています。「人と接する時は、自分の機嫌と関係なく、楽しくしよう」と心がけることさえ出来ない人なんて、一緒にいる価値がない。

 ちなみに、今の夫は朝起きた瞬間からニコニコと笑いながら「いまさー、夢の中で幼馴染とさー」などと、クソどうでもいい夢の報告を始めるご機嫌な人ですが、その血を受けついている息子もまた、起きた瞬間にニコニコと大きな笑みを浮かべます。そして不機嫌な人がいない家庭というのは、なんとも明るくて風通しがいい。今後も家族のだれか、そして自分が不機嫌にならないように、努力を続けたいと思っているのです。

Text/大泉りか

次回は<「男の顔の好み」は何かをきっかけに変わる。それは希望かもしれない>です。
EXILE TRIBEが並んだポスターを見て、旦那さんが大泉りかさんに一言、「この中で君の一番好みの人、当ててあげようか」。これは意外と難しいクイズでした。というのも、6ヶ月の息子の可愛さのあまり、大泉さんの顔の好みが変わっていたから!何かをきっかけに顔の好みは変わるのが希望かもしれないという、その意味とは?

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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