デートのお店を予約できない男って……

 ちょっと話がそれてしまいましたが話を元に戻すと、この夫の「特別な行事」への興味のなさってデートにも通じるところがあると思うんです。わたしの場合、初めてのデートや、口説き口説かれて「これから先、どうにかなるかも」という期待をはらんだ恋人未満の相手とのデートは、その日に備えて脱毛したりパックで肌の調子を整えたりとメンテナンスを施し、相手が気に入ってくれそうな洋服をチョイスし、待ち合わせの時間に遅れないように余裕を持って家を出て、別れた後は「今日は楽しかった、ありがとう」とお礼のメールを打つのが、ひとつのパッケージです。
で、相手には、デートコース決めや、夕食を食べる店の目星をつけておいてもらって、人気のある店ならば、予約を取っておいて欲しい……ってなことを望むわけですが、デートコースを決めたり、店の予約が出来ない男性って非常に多くないですか。

 こういうことを言うと、男女の役割がどうだ差別がどうだと言う人がいるんですが、女同士でご飯を食べる時だって、誘ったほう、もしくは仕切り役のほうがお店をいくつか提案して予約するのは、けっこう普通のことですよね。もちろん、時には「とりあえず集合してから店を決めればいい。最悪ファミレスでもチェーン居酒屋でも」というフランクな会合もありますけど、それはかなり気心の知れた相手の場合ではないでしょうか。

 すでに付き合いの長いカップルがするデートは除外して、初めてのデートや、恋人未満のふたりがするデートは、そんなフランクな会合ではない。なのに、なんで店の予約を取らないのか。ずっと謎だったんですが、ようやく理解しました。そういう人にとっては、男と女が、約束をして会えばデートなんです。会いさえすれば、デートが成立すると認識している。

 だから、かしこまって予約なんて取る必要はないっていうわけです。それぞれ持っている認識は違うというのに、「デート」という言葉でひとくくりにしているのが、事をややこしくしている原因なんだと思います。いうなれば流派や宗教の違いと同じ。だから、いくらこっちが「普通、デートというものは……」と訴えても無駄。逆に、こっちは「自動販売機のジュースを、道端で飲んでるのだってデートじゃん」などと言われても納得できないのと同じなんです。

 それこそ男性でもデートを特別な行事と考えて思い切りエスコートしてくれる人もいれば、女性でもどっちかの家でだらっとするほうが気楽で好きだっていう人もいる。さて、あなたにとっては「デート」っていうものは、どういう認識でしょうか。

Text/大泉りか

次回は <『身体を売ったらサヨウナラ』それでも一線を超えた人たちに感じるうらやましさと悔しさ>です。
元AV女優で大手新聞社の元社員の社会学者、鈴木涼美さんの著書『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』が映画化し、試写会に行ったという大泉りかさん。アダルト業界に長年かかわりながら、AVが自分の「一線」の向こう側にあると感じるという大泉さんは、この映画を観て何を思うのでしょうか。