兄との子どもがほしかったです

ぐりとまらさん(東京都)
エピソード:
 小さい頃から兄が好きでした。一緒にお風呂にはいったり、寝ている兄の唇にふれてみたり。恋人同士に間違えられるのが嬉しくて、よく二人でデートごっこもしました。
 他の人と付き合っても、別れると「やっぱり兄が好き」と感じました。兄との子供が欲しくて、二人の間には天才児が産まれると根拠なく信じていました。
 大学に受かった私は先に東京に住んでいた兄と暮らしはじめました。
 ですが、1年ほど経ったころ兄に恋人ができ、しばらくして子供ができました。兄がセックスをしていたのを知ってとてもショックでした。話はするする進み、兄は学生結婚。子どももすぐ産まれ、兄の卒業式を迎えました。
 兄嫁が子供を抱いて兄と3人で撮る卒業写真は、とても幸せそうでした。それを見て、これは大失恋なのだと初めて実感しました。
 私は家族写真は撮らず、兄ひとりだけの写真を撮りました。

右の者 兄の課程を修了し しあわせになれ 新たな家庭(ぐりとまら)

 常連の「ぐりとまら」さん。
 このコーナーの常連であるということは怨霊まみれの恋愛ばかりしている、ということなので、ありがたい反面、とても心配してしまうのですが、まあ今回もたっぷり濃厚なエピソードで……。ありがとうございます。とっても長いお手紙をいただきましたが、ダイジェストにしてみました。

 短歌も、よく読むと「課程」と「家庭」がかかってるんですね。即座にわからないところに、なんだか根の深い念のようなものを感じました。

 いつも思うのだけれど、「もうロリータファッションは卒業しました」とか、自分の判断でやめたり飽きたりすることを「卒業」と言い換えるのって、あまり正しくない気がします。卒業は自分から「卒業します」といってできるものではなくて、自分への評価がじゅうぶん認められた時にお墨付きとして与えられるものだし。

 その点、ぐりとまらさんのこのエピソードは、ほんとうに「卒業」させられた感じが、とても切なく、爽やかでした。

 まあおつらい時期もあるでしょうが、結局、お兄さんによく似た相手を見つけることになると思います。そんなことに気づかずに付き合っていて、あるときふと「あ、そういえばこんな癖、兄にもあった」って思い当たる。そんなもんです。

ご自分で「もう卒業」という方は学歴詐称です ごきげんよう

今日から新テーマ「お酒の席での恋愛エピソード」を募集!

 というわけで今回はここまで。

 次回から、募集テーマが変わります。4月のテーマは「お酒の席での恋愛エピソード&短歌」。

 4月といえば、お花見はもちろん、歓迎会・新歓コンパなど、何かとお酒の席での出会いが多いのではないかと思います。
 もちろんお花見での怨霊恋愛体験を書いていただければ嬉しいですが、そうじゃなくても、屋外・屋内に問わず、お酒にまつわるエピソードと短歌をお寄せいただけると嬉しいです。

悲惨であれば悲惨であるほど僕の大好物です。こちらのフォームからお送りください。ぜひに。

 では、また次回。

Text/佐々木あらら