自分が面白いと思うスイングの形を見つける

─佐久間さんの著作『できないことはやりません ~テレ東的開き直り仕事術~』の中でも超大物キャストを使うだけではなく、企画内容や人の活かし方で面白くさせるという企画の考え方が大変参考になりました。そういった企画を作る上での考え方のコツなどはありますか?

佐久間:僕は歳をとってきたので企画を考えるパターンもいっぱいできてきて、いろんなやり方をするんですけど。
尖った企画を考えていた時はとにかく書き出しました。
例えば「感動」がテーマだとしたら、既にある番組やモノを全部マスに書いて潰していくんです。
そして、潰したものには被らないように企画を出そうとすると逃げ道が1個か2個しかない。
そうすると必然的にニッチなものとの掛けあわせが出てくるんです。
出てこないときもたくさんありますけど、昔はそういうふうに無理やり考えていました。

─何かと何かを掛けあわせていくんですね。

佐久間: 自分の中でやりたいことがある場合はそれをどう伝えるかなんですけど、そうじゃないときは制約があったほうが考えやすいですね。
超大物のスケジュールが合わないとか、不利なことを条件にして、「1日で撮れるものにしよう!」という風に考えると逆に浮かんだりします。

─縛りや制約がただの言い訳ではなく、いい方向に動くのってすごいですね。

佐久間:不利な部分が魅力になるように考えていくと、それが企画の個性になります。

─絶対面白いと思っていた企画の反応がイマイチだったときに自信がなくなることはありますか?

佐久間:ありますあります。でも、時期が悪いと思い込みます。
自分が面白いと思うスイングの形を見つかるまでが大事で、それがどこかで世の中にハマったらホームランがたくさん出るはずだと思っています。

自分が面白いと納得できる企画の仕組みや、ある程度満足できるものが一本できたらその方法論は絶対に自分の武器になるので。
それを出すTPOを間違っただけだと思います。

「当たると思ったもの」は他者の感覚に合わせて作るものだから間違えることはありますけど、「自分が本当に面白いと思ったもの」は間違いじゃないから。

あとはどう伝えていくかなので、方法論を磨いていけば大丈夫です。

─当たると思って作っていた時のほうが外した時に凹みますか?

佐久間:そうですね。自分が面白いと思うことをちゃんとやっておけば良かったと思いますね。

今一番面白いと思う人

ゴッドタン キス我慢選手権 テレビ東京 佐久間宣行 劇団ひとり 上原亜衣

―今佐久間さんが一番面白いと思っている人とかものはなんですか?

佐久間:オークラさんという構成作家は天才だな、と思いますね。
売れていない頃からずっとずっと一緒に仕事してきて、また一周まわって面白いと思っています。

ゴッドタンのチーフ作家でもあり、バナナマンとおぎやはぎの座付きなんですけど、今では構成作家志望の若手にとっての憧れナンバーワン作家だそうです。

コントも、脚本も、歌詞も書けるし、番組の構成もできる。
最近『プレイボーイ』で連載も始まりました。面白いので、覚えておいた方がいいですよ!

─著書の中で、劇団ひとりさんが「ノーギャラでも『ゴッドタン』に出たい」とおっしゃっていたエピソードが印象的だったのですが、出演者の方と信頼を築きあげていく中で大切にしていることはありますか?

佐久間:そう言っていただける番組を持てているのはありがたいことですね。
優しい言い方をすると人柄ですが、シビアに言うと毎回毎回ちゃんと考えて結果を面白くしているかだと思います。

人間関係とか信頼っていうものはもちろんあるけど、まだ結果が見えていない企画でも出演者が言うとおりにやってみようと思うのは現場で面白くできているからだと思うので。
現場を面白くするために、劇団ひとりのことを面白く見せてあげようと思う熱意を持ち、その見せ方を考えることにもとても時間をかけています。
簡単に言っちゃうと努力だと思います。出て得だなと思ってほしいと考えて作っていますね。

『ゴッドタン』レギュラー陣とも 、ゲストが「得だ」と思って帰ってもらえる、ゲストが美味しくなって帰れる番組にしようと話しています。
それを続けていると「あの番組に出たい」となり、視聴者の「見たい」になる。なので、そういうおもてなし精神です。

─『ゴッドタン』に出演されている方、皆さんイキイキされているのにはそんな秘密があったんですね。最後に佐久間さんが今後挑戦してみたいことはありますか?

佐久間:僕は一発本番のコント番組『ウレロ☆未体験少女』をやっているんですが、やっぱりお笑いが好きなので、どこかでちゃんと作りこんだコント番組をやってみたいという気持ちがずっとあります。
フジテレビさん以外ではなかなかできていないと思うので。

─コント番組、とても楽しみです。本日はありがとうございました。