セーラームーンたちを勝利に導いていくタキシード仮面

 前世は「プリンス・エミディオン」という名の高貴な王子様だったというタキシード仮面。
まさに王子様だったワケですが、現世では時折タキシードを着て街を徘徊する男子学生です。
そんな、どう考えても戦闘に不向きな彼がやっているのは、主にセーラー戦士たちのサポート。
つまり、セーラームーンたちをもり立て、勝利に導いていくのがタキシード仮面の使命だといえます。

 男が先頭に立ってぐいぐい引っ張っていくのではなく、女が先頭に立ってずんずん進んでいけるように支える。
それがタキシード仮面なのです。
男女平等の世の中になったとは言いつつ、社長が男で秘書が女、総合職が男で一般職が女、みたいな図式がまだまだ根強い日本社会。
しかしそんな図式には目もくれず「サポートするのは女の仕事」という価値観をバッサリ捨てて、サポートする男のカッコよさをこれでもかと見せつけるタキシード仮面、マジで惚れる。
彼の姿にどれほど多くの女の子たちが勇気づけられたことでしょう。
愛する男をサポートするだけが女の幸せではない、愛する男にサポートされることもまた、女の幸せなのだ……タキシード仮面の登場は、男女完成の理想像をアップデートするものだったのです。

いつも この人があたしに力をあたえてくれる
あたしと「幻の銀水晶」に
信じられない勇気が 力が わいてくる どんどん 強くなれる
(『美少女戦士セーラームーン 完全版』2巻より)

 セーラームーンが、敵のボスキャラ「クイン・メタリア」に最後の戦いを挑むシーンのなんと感動的なことか。
ここには、サポートする王子様とサポートされるヒロインという関係性だけでなく、愛する王子様と愛されるヒロインという関係性も同時に描かれています。
戦うことと愛することのマリアージュ。
愛されるほどに、身も心も強くなる。
愛されてるから戦える。
わたしを愛してくれる人は、決してしゃしゃり出てこないし、戦う女の手柄を横取りしたりもしない。

 うわーん!やっぱりカッコいい!

 なんでも女より優れていないとプライドが傷ついてしまう男子は、サポートする王子様ことタキシード仮面がいかに多くの女子たちに愛されてきたかを知って、一から出直して欲しいものです。

Text/トミヤマユキコ