平気で不倫する男と、愛で束縛する男
光軌の唯一にして最大の欠点は、なんともいっても根っから正直なところです。男の人に対して「いくつになっても少年のようだ」と、その純粋さを褒め称えることがありますが、性欲に負けて不倫したり、妻に誘導されてうっかりそれを喋ったりと、光軌の少年っぽさは事態を悪化させてばかり。
何を考えているかわからない男よりよっぽどいい、というご意見もありましょうが、正直者の残酷さもかなり受け入れがたいものがあります。
そしてこの物語には、光軌よりもさらに厄介な男が登場します。美都の夫である「涼太」です。彼は、美都の携帯を盗み見ることで浮気を察知するのですが、どんな美都であっても愛し続けると誓うのです。
結婚記念日のディナーでは「大丈夫なんだずっと君を変わらず/愛することができるよ」と語り、美都が光軌の子どもを妊娠してしまったかも、というシーンでは「みっちゃん/それは僕の子だよ」と言ってのける(お前の子じゃねえ!)……怒るべきところで怒らない。それは究極の愛であるかに見えて、実際は呪いでしかありません。
というか、涼太って、夫なんだけど、マインドが完全にストーカーなんですよね。こういう男ほど恐ろしいものはないのですが、世間的には慈悲深く包容力のある男と思われてしまうのもヤバいところ。美都も友人にどれだけ説明しても、夫のヤバさをわかってもらえず、不倫女とはいえ、ちょっと同情してしまいました。