焼け付くような恋に我が身を注げるか

 光軌は平気で不倫する男、そして涼太は愛で束縛する男。これが美都の1番好きな人と2番目に好きな人……どちらも推せないこと、山の如し。
ただ、タイプが違うように見えて、ふたりにはある共通点があります。それは、関係を整理したり解消したりできないところ。
不倫をやめられない光軌も、愛のない結婚生活にしがみつく涼太も、結局のところ、現状維持がムダに得意なタイプであり、よく似たふたりなのではないでしょうか。

 そして、美都というのは、そういう男を王子様だと思ってしまう女なのです。もしかして、一番しょうもないのは、美都の「男を見る目」なのかも。しかし彼女がそんな自分を悔い改めることはなさそう。
「悪いか悪くないかなんて/誰がどこで決めるんだろう/私なんかきっとものすごい悪い奴だ/そこには私の幸せがあるだけなんだけど」
……そう言いながら不倫に突入していった彼女は、自分のしょうもなさについては最初から開き直っている。それって強い、すごく強い!
焼けつくような恋をするには、これぐらいのタフネスがないといけないのでしょうが、毎日三食ステーキみたいな美都の愛情生活は、もしわたしがやったら初日から胸焼けしそう。遠くから眺めるくらいが丁度いいなあと思ってしまいます。

Text/トミヤマユキコ

次回は <男らしさを諦めたおじさんには魅力がある『恋は雨上がりのように』>です。
コミックナタリー大賞第2位を受賞した人気恋愛マンガ『恋は雨上がりのように』。王道の少女マンガとは一味違い、主人公が恋するのはいかにもさえない、普通か普通よりちょっとイケてないおじさん。でも、そんなプライドやわがままさがない男だからこそ、女子には魅力的だったりするのです。