恋人に看病をされたい?彼氏の作ってくれたうどんが張り切りすぎだった

巷ではインフルエンザが猛威を奮っているようですが、子どもを産んで変わった習慣のひとつが、毎秋、インフルエンザの予防接種を打つようになったことです。独身時代は予防接種を打つなんて考えすらしていなかった。

インフルエンザを含む風邪や体調不良時の看病って、人によってスタンスが大きく違いますよね。わたしはアレコレと世話をされるのは苦手でひとりにしてほしい派。ポカリと薬だけ枕元に持ってきてくれたら嬉しいけれど、その後は放置しておいてほしい。わたしがしてほしいことしか、してほしくない。

風邪のお見舞いにきた世話焼きの彼氏

しかし世の中には、アレコレと世話を焼きたいという人もいる。かつて独身時代、付き合っていた恋人がそのタイプでした。ある時に、風邪をひいて体調不良で寝ていると、見舞いに来るという。「えー、ひとりで寝ていたいのに迷惑……」と心の中で思ったものの、せっかくの好意を無碍にするにも悪いかなと了承したところ、「何か食べたいものある?」と尋ねられた。なのでその時に食べたかったコンビニの冷凍の鍋焼きうどんをリクエスト。その時点でお腹がペコペコだったのですが、空腹を堪えて待つこと小一時間。飢え死しちゃうかも……と泣きそうになったところでようやく、食材が入ったスーパーの袋を下げて登場し、「うどん作るわ!」と張り切りだした。

うどんなんて出汁を温めてうどんを茹でるだけなんで、10分もかからずに作れるシロモノ。しかし彼は違った。タラだの海老だのの下処理を始めて延々とキッチンに立っている。張り切りすぎ! ひもじさに耐えながらまだかなまだかなと待っていると「うまっ!」という声が。スープを味見しているらしい。こっちはめちゃくちゃお腹減ってるのに悠長だなお前!

出されたうどんは…

出来上がったのは彼が登場してから一時間近く経った後。目の前に出されたのは、関西風のあっさりうどん。違う! わたしが食べたかったのは、醤油とみりんと酒が三つ巴したツユが衣にだくだくに染み溶けた海老天と、半熟の生卵と、ほどよく汁を吸ったかまぼこが乗っかっているヤツ!

風邪をひいてるときって普段よりも、食べたいものしか食べたくないじゃないですか。風邪で寝込んでいる恋人に、うどんを作ってくれるなんて、一般的には「優しい」と言われる行為だと思うのですが、二時間待たされた挙句、まったく食べたくないものを食べさせられてストレスしかない。すぐに帰るそぶりもないので、それなりに相手をすることになり、なんだかなぁと思った翌日、自分で濃い出汁の関東風のうどんを作って食べ「これだよなぁ」と深く頷いたのでした。以後、「看病しようか?」と言われても断ることにしています。

Text/大泉りか