お互いの人生を壊し合いたい。「こんなはずじゃなかったのに」が恋の醍醐味

人生を壊してくれそうな人を好きになってしまう

by Roberto Nickson

「どんな人がタイプ?」と聞かれると困ってしまう。「こんな人と付き合ってみたいな~」と思うことはあるけれど、実際にそういう人と付き合うことはあまりないし、むしろ真逆のタイプの人と付き合っていたりして、つじつまがあわない。

友人たちと好きな人のタイプの話題になると、だいたいは「え~~、うーん、優しい人」などと当たり前の結論になったり、「元カレがマッチョだったから、細い人とセックスすると頼りない感じがしてしまう(のでマッチョがいい)」などと、結局「元恋人が忘れられない」トークに行きつくことが多い。

私は逆に「もう絶対にバンドマンと付き合いたくないから、バンドマン以外がタイプ!」と言ってみたりもするが、そう言ったそばからバンドマンと付き合ってしまう。人がステージで歌っているのを見ると、急に性的にクラクラしてきて、その人とセックスしたくなる。理性で考えたタイプなんて、全然役に立たないし、恋は性欲なのだと思う。「タイプ」なんかよりも「性癖」と表現した方がまだ実態に即した話になるかもしれない。

ちなみに私がつい好きになってしまうのは、「バンドマン」、「突然よくわからない話をする人」、「台風の日にサーフィンに出かける人」。この3つが揃うとだいたい好きになってしまうが、やっぱりこれは「性癖」であって、「好きなタイプ」とは違うと思う。こういう人に恋をして、ともに時間を過ごすのは、絶対にしんどい。わかってる。だから好きになりたくないのだが、ライブを見るとセックスしたくなってしまうし、急にどうでもいい話をされると詩を読むようにうっとりする。台風の日にサーフィンに出かけられると心配でイライラするが、生きることに執着していないようでカッコいいなと少し憧れる。

婚活している友人に話すと「そんな人ありえないよ!」と言われるし、穏やかな生活のパートナーを選ぶとなるとまた基準は変わってくるだろう。でも私には、たとえば「経済力」「趣味が合う」「家事をしてくれる」みたいな、予め考えた条件で恋はできないのだ。自分の人生に役に立つ人よりも、むしろ自分の人生を壊してくれそうな人を好きになってしまう。

そこそこ平凡にやってきた我が人生もなかなか気に入っているし、このままやっていくつもりではあるけれど、心の奥のほうに、「どうせなら全部ひっくりかえされたい」という贅沢な願望もどこかにあって。そういう気持ちを私は恋に反映してしまっているのだと思う。だから客観的に見ると「ありえない」人と付き合ってしまうのだ。