生活費が足りなくなったらどうする?

生活費が足りない。そうなると選択肢は三つです。ひとつめは家計を見直して節約をすること。ふたつめは恋人に相談して互いに出し合う金額を増やす。みっつめは、わたしが自主的に補填すること。

まずは努力してみようと家計を見直すことにしました。一週間分の献立を週末のうちに立て、わざわざ駅前まで安いスーパーに買い出しに行ってまとめ買いするなどしたところ、多少は改善されたものの、根本的解決にはならない。でも、それは当然のことです。だって、当初に想定していなかった興遊費が共通財布から出ていくのだから、ちょっとくらい財布の紐を引き締めたところで、焼け石に水にしかならない。

次にわたしがとったのは、恋人に相談……ではなく、自主的に補填することでした。なぜ相談しなかったのかというと、冒頭に書いたように、わたしのほうが収入が多いのだから、それに応じての負担がフェアなんではないかと考えたこと。彼は嫌なことや気が削がれることがあると黙り込んでしまうタイプで、その不機嫌さがあからさまな態度が苦手で話し合いを避けたかったから。生活費内で家計をまわせない自分が悪いという負い目、さらには「『お金がない』が口癖の彼から、これ以上は生活費はもらえない」という遠慮があったからです。

自主的に補填するのは間違いだった

その選択は大間違いでした。家計の状況など知らない彼はこれまで通りのお金の使い方が当然だと思っていて、コンビニに一緒に寄る度に「これ、買ってくれない?」と籠の中に、自分用の菓子パンやスイーツを放り込む。月の途中に生活費が足りなくなって、五千円、一万円、と補填するたびに「なんであの人の菓子パンやスイーツ代をわたしが払っているのか……」と時に理不尽な思いを抱きつつも「お金なんて、持ってるほうが出せばいい」という割り切りもあって、気持ちがグラグラと揺れていたのですが、あるとき、当たり前のように缶コーヒーと菓子パンを買い物籠に放り込む彼に「ちょっと話があるんだけど」と家計が回っていないことをようやく伝えたのです。彼は「はぁ……」と大きく溜息をつきながらも、翌月から共通財布に入れる生活費の額をアップすることをのんでくれました。

いま覚えば、ひとりで抱え込むことなんてひとつもなかったし、さっさと伝えればよかったと心から思っています。けれども、痛みに強いし我慢し癖がついてるから、寸前まで痛みにさえも気が付かない。

でもこの傾向ってきっと、わたしばっかりじゃない。だって家計の赤字分は自分の貯金から補充していて、それを夫には相談できないでいるという妻の話もわりと聞きます。そういう家庭に限って家事育児も、妻側がほぼ担当していたりもするので、その不公平さを諦めつつもイライラしている妻たちをみると、「ちゃんと話をしたほうがいいし、もしも話が出来ないのなら、その夫、家庭に必要?」と疑問も抱くのだけど、かつてのわたしだってそうだったわけ。人様の家庭のことは、どうにもならないけれども、自分の腰はなんとかできる。とりいそぎ、整形外科に行ってこようと思います。

Text/大泉りか