主語の大きい決めつけの弊害

さて、わたしが今回あなたに一番お伝えしたいのは、たった一人の男性に抱いたイメージを全ての男性に当てはめてしまわないでほしいということ。

あなたの気持ちは、よくわかります。
嫌な目に遭うと、「男なんて!!!」とわたしもつい言ってしまいがちです。
でもね、全く同じ人というのはこの世に存在しないのです。
だから主語を大きくして決めつけてしまうと、相手に対して失礼なのもありますし、あなた自身の選択肢が狭まることにつながってしまいますから。

一度、逆の立場になって考えてみてください。
たとえば、あなたに今好きな人がいるとして、その男性は過去に女性に浮気をされた経験があるとしましょう。
相手は、ひどく傷ついた過去があり、現在もトラウマを抱えています。
きっとあなたはその話を聞いたとき「そんなことがあったんだ、つらかったね」と寄り添うと思うのです。女性の行動に対して「なにそれ! ひどい!」と憤慨するでしょうし、「その人と私は違うよ! 私は絶対に裏切らないから信じて!」と胸を叩くかもしれません。
そんな経緯を経た相手と晴れてお付き合いできたとします。

一緒にいる時間が長くなるにつれて、相手が自分に対して謂れのない不信感を抱いていることに気づいてしまったり、頑なに深入りしないような姿勢を貫いたり、「女なんてみんな裏切る生き物なんだから」と主語の大きい決めつけをしてきたら、あなたはかなしい気持ちになりませんか?
「普段私の何を見ているの?」「他の女と一緒にしないでよ!」「あなたを傷つけた人とわたしは違う人間なのに!」「どうして私を信用してくれないの?」と思ってしまいませんか?

……だからといって、頭で理解することと実際に行動することは別物ですし、人を信用することが容易ではないことは、重々承知しています。
でも、あなたは現状を打破したいんですよね。
それなら、いつにない踏ん張りを見せて恐怖心を押しのけ、「えーい!!!」という気骨を出す必要があるのではないでしょうか。

かなしみの答え合わせにメリットはない

「相手を信じられるようになるためにはどうしたらいいか」という質問には、元も子もない言い方ですが、どうしても「それは心の持ちようです」という答えになってしまいます。
逆に質問させていただきたいのですが、あなたは彼がどういう行動を取ってくれたら信じられるようになりますか?

いつでもスマホをチェックしていいと彼が言ってくれたら? 全ての人間関係を断ち切って片時も離れず過ごしてくれたら? きっと違いますよね。
そんなことをされたとしても、あなたの悩みは解消されないはずです。

わたしの場合、基本的に昔からパートナーのことは心から信用するようにしています。
でも過去にお付き合いをした人や関係を持った人が、もれなく嘘や隠し事が全くない清廉潔白な人だったかというと決してそうではないのです。
手をあげられたこと、ひどい言葉を投げつけられたこと、浮気されたこと、嘘を吐かれたこと、ある突然音信不通になって蒸発されたこと、それなりにあります。
そりゃあ当時はひどく落ち込みましたし、怒りやかなしみの消化には時間がかかりました。
でも、なぜ「サイテー野郎が!!!」と思いながらもその後に出会った男性のことを何度も信用できたのかというと、「クソ野郎のせいで人生を楽しめるチャンスが減るのは悔しいな! アイツのせいで自分の人生に影を落とされて堪るかよ!」と思っていたから。
そもそも、信じようが信じまいが、裏切られるときは裏切られますし、裏切られないときは裏切られないわけで。

それなら、疑心暗鬼に陥ってモヤモヤを抱えたまま付き合うよりは、「このわたしがこんな素敵な人に裏切られるわけないじゃーん!」と細かいことを気にせず明るくお付き合いしていたほうが、きっと楽しいんじゃないかな、と。
だから、人間関係においてある程度の鈍感さやデリカシーのなさ、「どうにでもなれ!」といったテキトーさは今でも大事だと思っています。
今のあなたは、「信じていた分、裏切られたとき余計につらい」と思うかもしれません。
たしかにそうだとは思いますが、「この人もいつか私を裏切るんだ」と疑いながら付き合って、いざそうだったときに「ほら、やっぱりね」と納得することになんの意味があるのでしょう。
かなしみの答え合わせをしたってメリットはありません。

相談文には「相手のことはよくわからない」と書かれていますが、そもそも相手のことを知らなければ信用するも何もないと思うのです。
スペック的な部分だけでなく、相手の話し方や自分の話への反応、自分以外の人間への接し方など、日常生活の中で見える細かなニュアンスから相手がどういう人なのかは少しずつわかってくるはずです。
信用は一朝一夕で構築されるものではないので、そういった何気ないことを知り、積み重ねていくことではじめてスタートラインに立てるのはないでしょうか。

ハナから「男はどうせ裏切るんだ」というフィルターがかかったままだと、相手の本質を見抜くことはできません。
あなたには、「彼は元彼とは別の人間」だという認識を持って、相手に対して穿った見方をせずに知ろうとすることをおすすめします。